改訂新版 世界大百科事典 「弘安礼節」の意味・わかりやすい解説
弘安礼節 (こうあんれいせつ)
1285年(弘安8)に亀山院の評定において一条内経らによって定められた公家の礼節に関する規式。内容は,大きくいって書札礼,院中礼,路頭礼の三つからなるが,古文書学上重要なのは書札礼である。亀山院政に先立つ後嵯峨院政は,中世的公家政治体制が確立された時期であるが,また書札様文書である院宣(さらに綸旨(りんじ)も)が政治文書として市民権を得た時期でもある。書札は本来親しい間の通交文書であったが,政治文書となった院宣,綸旨,御教書(みぎようしよ)は親しい者にだけでなく,不特定のものに与えるようになる。そこで,一般に通用する公の書札礼が要求されていたのであるが,《弘安礼節》はこれにこたえるものであり,中世はおろか近世まで遵守される書礼となった。《群書類従》所収。
執筆者:富田 正弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報