江戸時代の前期に,京都,大坂を中心に使われたことばの意で,近世語を前後期に二分して後期の江戸語と比較する考えに基づいている。近世前期の上方語は寛文年間(1661-73)を境に2期に区分され,前期がまだ中世的特徴を残しているのに対して後期の元禄年間(1688-1704)には近世語的特徴が明確になるとされている。その特徴は,ジとヂ,ズとヅの〈四つ仮名〉の混同が顕著になり,また動詞などの二段活用の一段化,敬語法の多様化などがあげられる。語彙も,元禄文化を担った町人層の生活から生まれた新しいことばが急増し,遊里語などの特別なことばも形成される。上方語の資料としては,浄瑠璃,仮名草子,俳諧,俳文など多くの俗文学があるが,江戸語との比較では,まだ未開拓の部分も多い。
執筆者:山田 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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