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不安定就業 ふあんていしゅうぎょうunstable employment

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

不安定就業
ふあんていしゅうぎょう
unstable employment

(1)就業が不規則・不安定、(2)賃金や所得がきわめて低い、(3)長時間労働や高い労働密度、(4)劣悪な社会保障水準、などの特徴をもつ就業状態を不安定就業または不安定就労という。巨大企業傘下の下請零細企業の低賃金労働者や社外工臨時工日雇労働者家内労働者は不安定就業の代表例として長い歴史がある。現代の不安定就業としては派遣労働者、請負労働者、パートタイマー、アルバイトなどがある。また、零細自営業者や在宅就業者のなかにも不安定就業形態が存在する。
 1970年代後半以降、低成長経済のもとで、雇用調整によって大企業の正規労働者が削減される一方、パートタイマーや派遣労働者などの不安定就業労働者が多数利用されるようになった。1985年(昭和60)7月には派遣労働者を制度的に定着させる目的で労働者派遣法(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」、昭和60年法律第88号)が制定された。また1980年代末のバブル好況期以降、日系人をはじめ外国人労働者の利用が進んだが、就労状況からみてその多くは不安定就業労働者の一員と位置づけられる。
 1990年代なかばから今日にかけて、グローバル競争の激化や労働者派遣法など労働法制の規制緩和を背景に、企業は人件費の削減を目ざして正規雇用を削減し、かわりにパートタイマーや派遣労働者をはじめ非正規労働者の活用を進めた。この結果、総務省の「就業構造基本調査」(2007)によれば、正規労働者と非正規労働者との比率はおよそ65対35、とくに女子では45対55に達している。非正規雇用の多くが不安定就業状態にあると考えられるが、非正規雇用の増加を働き方の選択肢の拡大ととらえ、不安定就業の側面を否定する見解もある。非正規労働者の4分の3は年間所得200万円未満のワーキングプアが占めていることに加えて(総務省、同調査)、2008年(平成20)秋以降の不況のもとで、およそ1年半の間に25万人を超える非正規労働者が職を失うなど(「派遣切り」「非正規雇用切り」)、不安定就業の側面が顕著になっている。[伍賀一道]
『伍賀一道著『現代資本主義と不安定就業問題』(1988・御茶の水書房) ▽加藤佑治著『現代日本における不安定就業労働者』増補改訂版(1991・御茶の水書房) ▽萬井隆令・脇田滋・伍賀一道編『規制緩和と労働者・労働法制』(2001・旬報社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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