非正規雇用(読み)ヒセイキコヨウ

デジタル大辞泉 「非正規雇用」の意味・読み・例文・類語

ひせいき‐こよう【非正規雇用】

期間を限定し、比較的短期間での契約を結ぶ雇用形態。1日の労働時間や1週間の労働日数は労働者によって異なる。臨時社員派遣社員契約社員パートタイマーアルバイトなどが含まれる。⇔正規雇用

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「非正規雇用」の意味・わかりやすい解説

非正規雇用
ひせいきこよう

「正社員の雇用」を意味する正規雇用に対することばであり、「非正社員の雇用」と同義である。非正規雇用に含まれる労働者は、パートタイマー、アルバイト、契約社員、派遣社員、請負労働者、期間工、季節工、準社員、フリーター嘱託など実にさまざまなタイプの労働者であり、正規雇用以外の労働者である。

 非正規雇用の概念は、正規雇用との違いをみることにより明確となる。両者には三つの点で大きな相違がある。第一に雇用の安定性の相違である。正規雇用の労働者は終身雇用慣行の対象であり定年までの勤務が可能である。企業は不況に直面しても可能な限り雇用継続に努める。他方、非正規雇用の労働者は、雇用期間が限定されており、企業は短期雇用を前提として雇用している。契約更新が続いて、結果的に長期雇用となることはあるが、企業が不況に直面すると契約更新を停止したり、解雇することとなる。

 第二は、企業は、正規雇用の労働者をフルに活用するため、能力開発を進め、配置転換を行い、長期的に育成していくことを目ざしている。他方、非正規雇用の労働者については、長期雇用を前提としていないから、企業にはそもそも育成していこうという発想がない。したがって、非正規雇用の労働者は職業生活が長くなっても、職業能力の水準がなかなか高まらない。

 第三は、両者間には労働条件に大きな格差がみられることである。正規雇用の労働者は、長期勤続することによってしだいに職業能力が高まり、それに応じて賃金も高まっていく。賞与退職金の支給対象でもある。他方、非正規雇用の労働者については、職業能力がそれほど高まらないこともあって、賃金はあまり高まらない。賞与や退職金の支給される非正規雇用の労働者はきわめて少数である。非正規雇用の労働者が結婚し、世帯を形成し、子供を産み育てていくことにはかなりの経済的困難が伴う状況にある。

 非正規雇用は1990年代に入って急増し、2005年(平成17)ごろには雇用者数全体の3分の1を占めるに至った。多くの企業が正規雇用を減らして非正規雇用を増加させるという人事政策を推進したからである。このような人事政策を推進したのは、第一に、国内外における厳しい企業間競争を生き抜くために、賃金などの労働コストの低い非正規雇用の活用が効果的なこと、第二には、経営の先行きが不透明であることから、企業活動の状況に応じて増減が容易である非正規雇用は企業経営の安定をもたらすこと、第三には、労働者派遣法の改正により、派遣社員を利用できる業務範囲の拡大が行われたり、労働基準法の改正により労働契約可能期間の上限が1年から3年に引き上げられるなど、非正規雇用を利用しやすくなったこと、を指摘できる。非正規雇用の労働者のなかには、多くの主婦パートタイマーのように労働時間の自由度が高いことから正規雇用よりも非正規雇用という雇用形態での働き方を望む者もいるが、そのようなパートタイマーを除くと、非正規雇用という雇用形態を望む労働者は、非正規雇用全体のなかでは少数派である。

[笹島芳雄]

『熊沢誠著『格差社会ニッポンで働くということ』(2007・岩波書店)』『社会政策学会編『格差社会への視座』(2007・法律文化社)』『笹島芳雄著『労働の経済学』(2009・中央経済社)』

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大学事典 「非正規雇用」の解説

非正規雇用
ひせいきこよう

正社員以外の雇用形態を指す言葉であり,一般にパート,アルバイト,契約社員,派遣社員,嘱託などの総称。有期雇用契約であることや労働時間が短いことを定義とする場合もある。非正規雇用者数は増加基調にあり,昨今では役員を除く雇用者の3分の1以上を占める。1990年代半ばから2000年代半ばにかけて,とりわけ若年の非正規雇用者が大幅に増えた。非正規雇用には雇用が不安定,賃金が低い,能力開発機会が乏しい,セーフティネットが不十分等の課題が指摘されている一方,労働時間の柔軟さなどから育児や介護などと両立しやすい働き方として選択される場合もある。非正規雇用比率は低学歴であるほど高く,大卒のそれは相対的に低いものの,新卒市場が冷え込む中で新卒でも非正規雇用に就かざるを得ない事態が問題となった。一方,多くの大学では非常勤講師や派遣の事務職員などを活用しており,大学経営は非正規雇用抜きでは成り立たない状況にある。
著者: 小杉礼子

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