日雇労働者(読み)ヒヤトイロウドウシャ

デジタル大辞泉 「日雇労働者」の意味・読み・例文・類語

ひやとい‐ろうどうしゃ〔ひやとひラウドウシヤ〕【日雇(い)労働者】

1日単位で雇われる労働者
[補説]雇用保険法では、日々雇用される者、および30日以内の期間を定めて雇用される者をいう。
[類語]労務者人夫日雇い

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「日雇労働者」の意味・読み・例文・類語

ひやとい‐ろうどうしゃひやとひラウドウシャ【日雇労働者】

  1. 〘 名詞 〙 一日単位の契約で雇われる労働者。特に、公共職業安定所の斡旋で、一日ごとの契約で土木工事などに従事する労働者。
    1. [初出の実例]「前条第一項の規定に該当しない日雇労働者」(出典:失業保険法(1947)三八条四)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日雇労働者」の意味・わかりやすい解説

日雇労働者
ひやといろうどうしゃ

企業と日々雇用契約を結び就労する労働者をいう。総務省の「労働力調査」や「就業構造基本調査」では「日々または1か月未満の雇用契約で雇われている者」を日雇と定義し、「1か月以上1年以内の雇用契約で雇われている」臨時雇と区別しているが、実際には両者の区分はあいまいである。雇用契約上は日雇であっても、事実上長期雇用化し、数年以上に及ぶケースも珍しくない。日雇労働者は不安定雇用の代表的形態の一つで、正規雇用に比較し就労は不規則で、賃金をはじめ労働条件は劣悪である。なお、緊急失業対策法(昭和24年法律第89号)に基づいて設けられた緊急失業対策事業に就労していた労働者を日雇とよぶことがある。

 「就業構造基本調査」によれば、日雇労働者は1960年代の高度成長期から増加を続け、とくに低成長経済に転じた1970年代後半以降に急増した(1971年89.2万人、1979年163.9万人、1982年155.1万人)。これは企業が正規常用労働者の雇用を抑制するかわりに日雇労働者や臨時雇などの不安定雇用を積極的に増加させたためである。日雇労働者は1980年代以降漸減傾向にあるのに対し、臨時雇は一貫して増加している。ピーク時にあたる1979年(昭和54)の日雇労働者(163.9万人)の産業別内訳は建設業(72.3万人、44.1%)でもっとも多く、製造業(31.8万人、19.4%)、卸売・小売業(21.4万人、13.1%)がこれに続いている。建設業では重層的下請構造の下層に多くの日雇労働者を組み込んできた。

 大阪・あいりん地区(旧愛隣地区、釜ヶ崎)、東京・山谷地区、横浜・寿町地区および名古屋・笹島地区は、1960年代から1980年代にかけて建設業を中心とする日雇労働者の代表的集積地域であった。最盛期には、あいりん地区に推定で約2.1万人の日雇労働者が、山谷に約1.1万人が集中していた。これらの地域では日雇労働者の就労斡旋(あっせん)に公共職業安定所の出先機関のほかに違法な手配師(私設職業紹介業者)が関与していた。日雇労働者の就労は求人数のほかに天候によっても大きく左右され、仕事につけない場合には食事を抜いたり、野宿を余儀なくされる。これらの地域では1990年代の長期不況以降、就労できない高齢日雇労働者が増加し、ホームレスとなる人たちも少なくない。

 なお、2009年(平成21)「労働力調査」によれば、雇用者5460万人の従業上の地位別内訳は、常雇4709万人(86.2%)、臨時雇647万人(13.7%)、日雇104万人(1.9%)である。21世紀初頭に社会問題となった「日雇派遣」(日々雇用の派遣労働者)は日雇労働者の新たな形態である。

[伍賀一道]

『江口英一他著『山谷』(1979・未来社)』『加藤佑治著『現代日本における不安定就業労働者(増補改訂版)』(1991・御茶の水書房)』『生田武志著『ルポ・最底辺――不安定就労と野宿』(2007・筑摩書房)』『派遣ユニオン・斎藤貴男著『日雇い派遣』(2007・旬報社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「日雇労働者」の意味・わかりやすい解説

日雇労働者 (ひやといろうどうしゃ)

業務の断続,繁閑が著しい分野で文字どおり日々の雇用契約で雇われる労働者をさす。しかし,一般的には建設,港湾運輸,農林水産などの分野で土工,荷扱夫,雑役,人夫などの不熟練職種に就労し,技能習熟の機会もないため低賃金である筋肉労働者をさすことが多い。雇用関係がつねに変動し,高齢者層が恒常的に固定化する傾向が強く,相対的過剰人口(〈産業予備軍〉の項参照)の代表的な就業形態であるという性格をもつ。したがって,大工,左官,石工などの熟練職種に就労する者は,日々の雇用契約であってもこれに含めない。狭い意味では,緊急失業対策法(1949)によって公共職業安定所に登録された失業者で失業対策事業に就労する日雇労働者をさす場合もある。その数は1960-61年時に約35万人のピークを迎え,その後減少し,いまや終息の段階にある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「日雇労働者」の意味・わかりやすい解説

日雇労働者【ひやといろうどうしゃ】

1日単位の契約で雇用される労働者。賃金は日給。その法的保護は常雇労働者に比べて不十分であるが,一定要件の下に雇用保険健康保険が適用される。1949年以後,緊急失業対策法に基づき,多くの日雇労働者が公共事業に従事していたが,その日給が初め240円であったところからニコヨンの通称が生じた。→失業対策事業
→関連項目港湾労働法全日本自由労働組合日雇労働者健康保険

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日雇労働者」の意味・わかりやすい解説

日雇労働者
ひやといろうどうしゃ
day labourer

日々雇用される労働者。一般に雇用関係が一定せず,その職種や職場が絶えず変動する不熟練労働者であることが多い。緊急失業対策法による公共職業安定所への登録日雇労働者,港湾・運輸・建設関係の日雇労働者,官公庁の定員外臨時職員,食品・機械工業に多い季節・臨時労働者,女子のパート・タイマー,学生のアルバイトなどの名称で種々の産業分野に存在する。日本の法律上の定義では,(1) 日々または1ヵ月に 30日以内の期限を定めて雇用される者 (雇用保険法 42) ,(2) 港湾運送事業では,日々または2ヵ月以内の期間を定めて雇用される者 (港湾労働法2条4号) などを日雇労働者と呼んでいる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android