日本大百科全書(ニッポニカ) 「世界平和度指数」の意味・わかりやすい解説
世界平和度指数
せかいへいわどしすう
global peace index
世界の国・地域がどれだけ安心して暮らせる場所であるかを示す指標。英語の頭文字をとってGPIと略称する。シドニーに本部を置く経済平和研究所(IEP:Institute for Economics and Peace)が2007年から毎年発表している。イギリスの経済誌『エコノミスト』傘下の調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence Unit)を中心とする研究機関などが収集したデータを基に、「戦争・内戦」「軍事化」「安心と安全」の3分野に関連する23指標を数値化して評価したもので、数値が小さいほど平和度が高いことを示す。具体的指標として「戦争・内戦」で戦争・内戦の有無、戦争・内戦死者数、近隣諸国との緊張関係、「軍事化」では核兵器・重火器保有数、軍事費の対国内総生産(GDP)比、10万人当りの武器輸出入量、軍人比率など、「安全と安心」では、夜道での不安感、亡命・避難者数の対人口比、10万人当りの投獄者数・殺人事件被害者数、暴動数、政治的不安定さ、テロ活動の潜在的可能性、暴力犯罪数、武器の入手しやすさなどを採用している。治安がよく犯罪が少ない国・地域であっても、潜在的にテロに巻き込まれるリスクがある場合や近隣諸国と緊張関係にある場合などは評価が下がる。ただ、世界平和度指数に対しては、学者や非政府組織などから「核の傘の下にある非核保有国が優位である」「女性、子ども、少数者らへの暴力や差別が十分に反映されていない」などの批判がある。2022年6月発表の2022年版(対象163か国・地域)では、世界全体の平和度指数は前回より0.3%悪化した。ロシアのウクライナ侵攻や、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)流行による治安悪化などが響いたとみられる。評価が高い国は1位アイスランド、2位ニュージーランド、3位アイルランド、4位デンマーク、5位オーストリア。軍事費の多いアメリカは129位、中国は89位、ロシアは160位で、最下位はアフガニスタン。ロシアのウクライナ侵攻で、両国だけでなくフィンランド、スウェーデンなど近隣諸国も順位を下げた。日本は10位で、2010年前後には3位であったが、中国や北朝鮮などとの関係悪化で順位を落としている。
[矢野 武 2023年8月18日]