世界文化(読み)せかいぶんか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「世界文化」の意味・わかりやすい解説

世界文化
せかいぶんか

反戦反ファシズムの芸術、思想、文化情報雑誌。1935年(昭和10)2月、京都の中井正一(なかいまさかず)、新村猛(しんむらたけし)、真下信一(ましたしんいち)、和田洋一、久野収(くのおさむ)、富岡益五郎(とみおかますごろう)らによって『美・批評』の後継誌として創刊され、37年10月まで通巻34号を発行した。部数500~800。海外の反ファシズム運動を系統的に紹介するとともに、同人自らも知識人として運動を推し進めようとした点に特色があった。しかし、この編集方針がコミンテルン第7回大会の新方針に沿う「人民戦線的文化運動」であるとして、37年11月8日以降同人が治安維持法違反で検挙され、中井、新村ら6名が起訴された。留置所・未決拘置所での2年間前後の拘禁ののち、39年から40年にかけて有罪判決を受けるが、執行猶予つきであったので全員出獄した。

[荒川章二]

『和田洋一著『私の昭和史』(1976・小学館)』『平林一著「『美・批評』『世界文化』と『土曜日』」(同志社大学人文科学研究所編『戦時下抵抗の研究I』所収・1968・みすず書房)』『『復刻版 世界文化』(1975・小学館)』

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改訂新版 世界大百科事典 「世界文化」の意味・わかりやすい解説

世界文化 (せかいぶんか)

1935年2月号から37年10月号まで24冊発行された反ファシズムの文化雑誌。軍国主義のもとで日本文化がとざされていくのに抗して,〈世界文化の大通り〉を歩むことをめざし(創刊号宣言),ファシズム反対の文化運動のよりどころとなった。しかし,執筆者があいついで検挙され,廃刊した。同人は中井正一(まさかず),新村猛,久野収,武谷三男,真下信一,和田洋一,禰津正志(ねづまさし)などの京都大学出身者で,京都で発行された。西欧の反ファシズムの潮流の紹介(〈世界文化情報〉)のほか,中井正一《委員会の論理》のような独創的論文の発表の場となった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の世界文化の言及

【反ファシズム】より

…共に長くは続かなかったが,コミュニストや社会主義者よりもリベラル派が中心に結集した広範なグループで,明確な反ファシズム運動を形成した。前者の系統からやがて,《世界文化》(1935年2月創刊),《土曜日》(1936年7月創刊)などによる関西知識人の反ファシズム文化運動が生まれ,後者に加わっていたかなりの人々は,反ファシズムの雑誌《社会評論》(1935年3月創刊)や《労働雑誌》(1935年4月創刊)の執筆者となった。ファシズム批判を公然と自らの著書名として刊行した著名な知識人は,長谷川如是閑と河合栄治郎であった。…

※「世界文化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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