日本大百科全書(ニッポニカ) 「久野収」の意味・わかりやすい解説
久野収
くのおさむ
(1910―1999)
思想家、評論家。大阪府生まれ。1934年(昭和9)京都帝国大学文学部卒業。在学中、滝川事件を体験、学生を組織して滝川幸辰(たきかわゆきとき)教授の休職に対する反対運動を起こしたが、弾圧された。1935年『世界文化』誌、翌1936年『土曜日』紙の創刊に参加。京都を中心に反ファッショの文化運動を進めたが、1937年治安維持法違反で検挙、2年間投獄される。第二次世界大戦後の1949年(昭和24)学習院大学講師となり、哲学を講ずる。「平和問題談話会」(1949年結成)のメンバーとして日本国憲法の原理にたった全面講和や非武装中立の実現を目ざして活動。以後、「憲法問題研究会」、安保闘争、ベ平連運動と不断の実践活動を続けるなかで、リベラリズム、市民主義の立場にたった数々の優れた平和論を発表した。対談の名人としても知られ、多くの対談集を残している。おもな著書に『現代日本の思想』(共著・1956)、『憲法の論理』(1969)、『平和の論理と戦争の論理』(1972)、『歴史的理性批判序説』(1977)、『日本遠近――ふだん着のパリ遊記』(1983)などがある。
[西田 毅 2016年8月19日]
『『久野収対話集』全4冊(1972~1973・人文書院)』▽『『久野収対話史』全2冊(1988・マドラ出版)』▽『『久野収集』全5冊(1998・岩波書店)』