日本大百科全書(ニッポニカ) 「中性点接地」の意味・わかりやすい解説
中性点接地
ちゅうせいてんせっち
電力系統において発電機や変圧器の電気的中性点を接地することをいう。電気回路には単相交流と三相交流があり、電力系統では大きな電力を取り扱うことから経済的に有利な三相交流を用いている。三相交流とは、原理的には単相交流を三つ組み合わせたもので、これを3本の電線で接続するようにくふうされている。この三相交流では、発電機や変圧器が のように接続されているときのa点を、常時電圧が零となることから中性点と称している。
中性点が接地されていないと、電力系統の地絡事故の際、異常電圧が発生し、電力機器の絶縁を脅かしたり、保護リレーによる系統事故の検出が困難になるなど種々の障害が生じてくる。したがって比較的低電圧の小規模系統を除き中性点を接地している。この中性点を接地する方式は、直接接地方式、抵抗接地方式、消弧リアクトル接地方式に大別できる。直接接地方式は中性点を直接金属接地するもので、異常電圧の発生を確実に防止できることから電力機器の絶縁を著しく低減できること、地絡事故時の電流が大きいので保護リレーによる事故検出が容易なことなどの面で優れているが、通信線への電磁誘導障害などの面で注意を要する。この方式は日本では187キロボルト以上の系統に用いられている。抵抗接地方式は中性点を抵抗を用いて接地するもので、非接地方式に比べ異常電圧の発生を防止し、保護リレーの動作を確実にすることを目的に採用されるが、この抵抗値は電磁誘導による悪影響も考慮し選定される。この方式は154キロボルト以下の系統に適用され、抵抗値は154キロボルト系統においては400~900オーム、66~77キロボルト系統においては100~400オーム程度となっている。消弧リアクトル接地方式は中性点をリアクトルを用いて接地するもので、ペテルゼンコイル接地方式ともよばれている。この方式の特徴は、地絡事故時に発生する静電容量(キャパシタンス)による電流を位相が反対のリアクトルによる電流(消弧リアクトルに流れる電流)により打ち消し、事故点に流れる電流を零にすることによって事故点アークを自然消滅させ、事故の発生そのものを防止するものである。この方式は取扱いが複雑なことから、系統の変化が少ない地方のローカル系統(66~77キロボルト)に限定され適用されている。33キロボルト以下の小規模系統においては異常電圧のおそれが少ないので非接地とすることもある。
なお、発電機にも中性点があり、発電機のコイルに地絡事故を生じたとき、事故を確実に検出するとともに異常電圧の発生による影響を防止するため、この中性点を前述の変圧器中性点と同様接地している。これには直接接地方式と抵抗接地方式がある。
[松田高幸]