中東白書(読み)ちゅうとうはくしょ(その他表記)White Papers on the Middle East

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中東白書」の意味・わかりやすい解説

中東白書
ちゅうとうはくしょ
White Papers on the Middle East

1922~39年に出された,中東問題に関する5つのイギリスの外交白書。 (1) 22年の白書はチャーチル白書とも呼ばれ,バルフォア宣言パレスチナユダヤ人国家にするとは約束していないこと,パレスチナに自治政府をつくる援助をすること,ユダヤ人移民をパレスチナの経済が吸収可能な数に抑えることが示された。シオニスト側は一応このイギリスの政策を受入れたが,アラブ側は拒絶した。 (2) 28年イギリスの植民地相によって覚え書が発表され,これも白書と呼ばれる。ユダヤ人の「嘆きの壁」への通行権と,そこでの祈りの形態はオスマン帝国時代の状況の維持がなされるべきとの見解が示された。 (3) 30年の白書は,イギリスの委任統治のもとで,アラブ側とユダヤ側の両方の主張を満足させるべきことを確認し,ユダヤ人の移民者数を一層きびしく制限すべきだとした。アラブ側はこれを歓迎し,シオニスト側はこれを拒絶した。シオニストはイギリスに働きかけ,31年 C.ワイズマンにあてたマクドナルド書簡で,ユダヤ人移民の制限を緩和させることに成功した。 (4) 37年の白書では,ピール委員会の報告を取入れて,パレスチナを3分割する計画を表明。しかし 38年にこの計画は白紙撤回された。 (5) 39年の白書は,ユダヤ人移民の数を,将来の5年間で7万 5000人に制限すること,ユダヤ人のパレスチナでの土地購入の制限,アラブ人口が多数を占めるなかでのパレスチナの独立などを表明。シオニスト側はこれを拒絶し,イギリス委任統治政府と戦うことを決定した。アラブ側は即時独立とユダヤ移民の全面禁止を主張し,態度を保留した。この白書の内容は,イギリスが委任統治を放棄するまでの基本路線となった。

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