中米共同市場(読み)ちゅうべいきょうどうしじょう(その他表記)Mercado Común Centroamericano スペイン語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「中米共同市場」の意味・わかりやすい解説

中米共同市場
ちゅうべいきょうどうしじょう
Mercado Común Centroamericano スペイン語
Central American Common Market 英語

スペイン語略称MCCA、英語略称CACM。1961年発効の「中米経済統合に関する一般条約」(マナグア条約)によって本格的に発足し、グアテマラホンジュラスエルサルバドルニカラグアコスタリカの中米5か国によって構成されている地域経済協力機構。結成の目的は、域内貿易の自由化、域外関税の統一化、産業統合を含む共同市場の形成にある。

 中米諸国は各国の人口が少なく、すべての国をあわせても南米の中規模の国一つぐらいの規模しかなく、したがって早くからそのような狭い国内市場を克服する手段として経済統合の必要性が認められていた。1961年から62年の間に域内貿易の95%の自由化、67年には域外共通関税の実施と順調な展開をみせたが、80年代の中米紛争で経済統合と域内貿易は挫折(ざせつ)した。

 1987年に中米和平が実現し、それを受けて中米地域の統合を活性化する方針を含む「緊急行動計画」が採択され、この方針は国連の「中米経済協力特別計画」にも組み込まれた。このような状況のなかで中米の経済復興と経済統合の本格的な再活性化を目ざした「中米経済行動計画」(PAECA)が90年に採択された。統合促進の機構整備のため、「中米機構」(ODECA、1951年設立、その後ホンジュラスとエルサルバドルとの戦争以降機能を停止していた)を改組して、93年2月に「中米統合機構」(SICA)が設立され、このSICAの下で、中米議会、中米経済統合事務局、中米裁判所などが運営されることになった。

 1992年にはホンジュラス、グアテマラ、エルサルバドルの3か国が相互の貿易自由化と共通域外関税の実施に合意、さらにニカラグアも加わって4か国の共同市場が発足した。コスタリカについてはより緩やかな統合のテンポが考慮されている。

 また、1993年11月にはグアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカの中米5か国によって「中米経済統合条約」が調印された。この条約は自由貿易地域の形成、域内の人的移動の自由などを規定している。中米共同市場の本部事務局はグアテマラ市に置かれている。

 中米地域の経済統合は深化しており、メルコスール(南米南部共同市場)、アンデス共同体カリブ共同体などとの協力関係も進み、またメキシコと自由貿易協定を締結し、北米と南米の掛け橋となりうる位置にいる。

[相原 光・秋山憲治]

『日本貿易振興会編・刊『活発化する中米共同市場』(1995)』

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百科事典マイペディア 「中米共同市場」の意味・わかりやすい解説

中米共同市場【ちゅうべいきょうどうしじょう】

Central American Common Marketといい,略称CACM。1960年設立。中米機構基盤とし,中米諸国の自由貿易と経済・産業統合を目的とする協力組織。中米経済統合銀行(所在地テグシガルパ,1963年に設立)をもつ。加盟国5ヵ国。本部グアテマラ市。1969年のエルサルバドル・ホンジュラス戦争やその後の中米危機により,活動はほぼ停止していた。その後,1990年の中米5ヵ国首脳会議を契機に,1993年に中米経済統合条約が調印された。
→関連項目エルサルバドル

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中米共同市場」の意味・わかりやすい解説

中米共同市場
ちゅうべいきょうどうしじょう

「中央アメリカ共同市場」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の中米共同市場の言及

【エルサルバドル】より

…保税加工区での生産が急激に拡大しており,輸出の40%,輸入の20%近くにまで達している。同国は1961年に中米5ヵ国による中米共同市場(CACM)の結成に参加しており,また1995年には世界貿易機関(WTO)に加わった。通貨流通は国立銀行の管理下にあるが,金融部門でも自由化政策が進められている。…

【関税同盟】より

…EECに対抗して,イギリス,スウェーデン,デンマーク,オーストリア,ポルトガルは60年にヨーロッパ自由貿易連合(EFTA)を発足させたが,これは自由貿易地域にとどまるものであり関税同盟ではない。EECやEFTAに触発されて,それ以後,ラテン・アメリカ自由貿易連合(LAFTA),中米共同市場(CACM),アラブ共同市場(ACM),西アフリカ諸国経済共同体(ECWAS)等,世界各地に多くの経済統合が発足している。【倉田 一成】。…

【中央アメリカ】より

…多くの国で富の少数者への集中や地方主義がみられ,国境問題が解決されていないため,政治的には不安定な状態がつづいてきた。地域統合の重要な一歩前進となるとみられていた中米共同市場(CACM)は1963年に正式発足し,域内の共通関税や貿易自由化を促進したが,69年のホンジュラスとエルサルバドルの間での〈サッカー戦争〉のため,事実上機能を停止している。79年7月にニカラグアで長期にわたった独裁政権が倒れ,左派のサンディニスタ(サンディニスタ運動)が権力を握っており,グアテマラやエルサルバドルでも内戦が深刻化した。…

【ラテン・アメリカ】より


[域内経済統合への歩み]
 こうした状況の下でラテン・アメリカ諸国は,工業化を基盤として域内協力を進展するため経済統合の結成に踏み切った。まず1960年の条約締結を経て61年にラテン・アメリカ自由貿易連合と中米共同市場が発足した。前者にはブラジル,メキシコ,アルゼンチンの三大国にチリ,ペルー,コロンビア,ベネズエラ,ボリビア,エクアドル,ウルグアイ,パラグアイが加盟,域内自由貿易市場の結成と産業補完協定による加盟諸国間の工業化政策の調整が主要目標とされた。…

※「中米共同市場」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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