新約聖書の《マタイによる福音書》(6:9~13)と《ルカによる福音書》(11:2~4)に記されている,イエスが十二弟子たちに教えた祈りの模範。カトリック教会では主禱文という。最初の三つは神についての,後の三つは人間についての祈願である。これと形式的に類似した祈りは,ユダヤ教にもかなり見られる。けれども〈主の祈り〉はその内容において,それらの祈りとは違った独自性をもっている。それは神の栄光と御国のための祈願が,他に先立ってなされ,他の祈願はこれによって方向づけられている点である。すなわち,〈神の国〉と〈神の義〉をせつに求めるとき,みずから日常生活に必要な具体的なものが備えられるという,イエスの思想が示されている。
また信仰者は,イエスの到来とともに〈神の国〉の支配がすでに開始されたことを知っているのだから,その実現を祈ることは,イエスのできごとへの信仰が前提とされていることとなり,ここでもイエスが媒介となっている。
執筆者:川村 輝典
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イエスが弟子たちに教えたと伝えられる祈りの模範的形式。「マタイ伝福音書(ふくいんしょ)」第6章9~13節および「ルカ伝福音書」第11章2~4節に記されているが、前者のほうが長く、表現や語られる場面も多少異なっている。両者のうちいずれかを原型とみなすわけにはいかず、おのおのの形式が特定の状況と結び付いていた。「主の祈り」(主祷文(しゅとうぶん))という呼称は、福音書のなかにはみられず、のちに教会の礼拝のなかに定着するにつれて与えられたものである。今日実際に用いられている主の祈りは次のような形になっている。
「天にまします我らの父よ、ねがわくは御名(みな)をあがめさせ給(たま)え、御国(みくに)を来らせ給え、御心(みこころ)の天になるごとく地にもなさせ給え、我らの日用の糧(かて)を今日も与え給え、我らに罪を犯す者を我らがゆるすごとく我らの罪をもゆるし給え、我らを試みにあわせず悪より救い出し給え、国と力と栄えとは限りなく汝(なんじ)のものなればなり、アーメン」。
[土屋 博]
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…カトリック教会の用語で,次の二つの意味がある。(1)キリストの生涯の15のおもなできごとを,救いの秘義として〈喜び〉と〈苦しみ〉と〈栄光〉の3種に分け,各秘義にそれぞれ〈主の祈り〉1回とアベ・マリア回を唱えながら黙想する祈りの方法。ロザリオという名称はキリシタン時代から用いられ,原語であるラテン語のrosariumは,〈ばらrosaで編まれた花冠〉の意。…
※「主の祈り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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