久松真一(読み)ひさまつしんいち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「久松真一」の意味・わかりやすい解説

久松真一
ひさまつしんいち
(1889―1980)

宗教哲学者。号は抱石庵(ほうせきあん)。近代後の生き方を探究するFAS協会の創立者。岐阜市に生まれ、浄土真宗信仰にはぐくまれたが、その信仰に疑いをもつ。しかし京都帝国大学で西田幾多郎(にしだきたろう)の宗教学概論の講義に感銘を受け、西田の紹介により妙心寺僧堂師家池上湘山(いけがみしょうざん)(1856―1928)のもとで禅の修行に励む。ポスト・モダニストとして、中世の神律、近代の自律を批判し、無相の自己に目覚めることを説く。臨済宗(りんざいしゅう)大(現、花園大学)、龍谷(りゅうこく)大、京大などの各大学教授歴任。著書は『東洋的無』(1939)、『絶対主体道』(1948)、八木誠一(1932― )との対談『覚(かく)の宗教』(1980)など。

原島 正 2016年9月16日]

『『久松真一著作集』8巻(1969~1980・理想社/増補版、9巻、別巻1・1994〜1996・法蔵館)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「久松真一」の解説

久松真一 ひさまつ-しんいち

1889-1980 大正-昭和時代の宗教哲学者。
明治22年6月5日生まれ。西田幾多郎に師事し,妙心寺で禅の修行をする。臨済(りんざい)宗大(現花園大),竜谷大の教授をへて,昭和21年母校京都帝大の教授。のち京都市立美大教授。禅文化の哲学的研究で知られた。昭和55年2月27日死去。90歳。岐阜県出身。旧姓大野。号は抱石庵。著作に「東洋的無」「禅と美術」など。

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