日本大百科全書(ニッポニカ) 「事務用家具」の意味・わかりやすい解説
事務用家具
じむようかぐ
オフィスで使われる家具の総称で、事務机、椅子(いす)、会議用テーブル、書庫、書架、ファイリング・キャビネット、ロッカー、金庫、応接セット、間仕切、衝立(ついたて)などが主要なものである。1955年(昭和30)ころまでは事務用家具はほとんど木材でつくられていたが、その後アメリカ進駐軍の使用していた家具に倣って、わが国でも鋼製のものが製作されるようになり、現在では事務用家具といえば鋼製と考えられるほどに広く普及した。ただし高級な家具には木製のものが使われている。
事務用家具に要求される性能は次のようなものである。
(1)事務処理が能率よくできるように設計されていること。
(2)人間工学的な配慮がされていて、作業しやすく疲れないこと。
(3)インテリアによくあうこと。
(4)室内空間との間に寸法調整ができていること。
(6)耐久性があり、経済的であること。
最近ではオフィスオートメーション(OA)が普及し、オフィスは事務工場といった性格を帯びるようになったため、家具の合理化、システム化に対する要求はいっそう強いものになってきている。また建物の側でも、従来は小部屋の中に机を対向配列するといった形式が多かったが、最近では大部屋で同向配列にしたり、植物などを交えた不整形のランドスケープ配列がとられるなど、室内環境にも変化がおこってきているので、それにあうデザインの家具が要求されるようになってきた。
[小原二郎]
事務用机
平机、片袖(かたそで)机、両袖机のほか、脇(わき)机、L字型机、タイプライター机、計算機机などがある。机とテーブルの区別は、机は方向性があるもの、テーブルはないものというように考えればわかりやすい。一般に事務用机といえば、スチールのグレーに塗られたものというイメージがあったが、最近では構造部分には鋼材を使い、甲板(こういた)や引出しの前板のように手の触れるところには、木材やプラスチックを使用した混合型のものや、カラフルなものが好まれるようになってきている。次に寸法についていうと、机、椅子は当初はアメリカ軍の家具の数値をそのまま採用していたが、その後人間工学の研究が進んで、日本人の体位にあわないことがわかり、1971年(昭和46)に現用の規格に改正された。机の高さは70センチメートルと67センチメートルで、甲板の大きさは間口については40センチメートルから160センチメートルまで7種類、奥行方向については60、70、80センチメートルの3種類になっている。
[小原二郎]
事務用椅子
ほとんどは鋼製の回転椅子が使われている。寸法を決めるにあたっては、従来は机と椅子の間に人間をはめ込んで、適合しているかどうかを判断していたが、人間工学の研究が進んで、まず人間があってそれにあう椅子を選び、次に人間と椅子にあわせて机の寸法を決めるという考え方に改められた。そのため椅子の高さは低くなり、38~41センチメートルが標準になっている。なお椅子の座面についていえば、従来は後方に傾斜したものがよいと考えられていたが、人間工学の研究によってむしろ水平のほうがよく、さらにOAのように作業能率をおもに考える場合には、座面が前傾していたほうが上体に無理がかからないことがわかってきた。そのため最近では前傾椅子が市場に出始めている。なお、椅子の背もたれが上体の動きに応じて後方に倒れるものをロッキングというが、スプリングが弱いと疲れやすいので、規格ではほとんど動かないものがよいと決めている。
[小原二郎]
書庫・書棚
重要な文書や書類などの収納具で、扉には両開き、片開き、引き違いなどの形式がある。またレールにのせて移動し、収納量を増すようにくふうされたものもある。書庫は重量が大きいので、地震に対する安定性を表示するように規格は勧めている。
[小原二郎]
収納ユニット
ユニット形式の収納具のことで、戸棚で壁面をつくる構造になったものもある。面積を有効に利用できるのみならず、見た目にもすっきりとして美しいので、最近は広く使われるようになった。
[小原二郎]
ファイリング・キャビネット
書類の整理に使用するもので、引出しの単位の大きさにはA判とB判がある。積み重ねは2段、4段、5段の別があり、脇机と兼用になったものもある。
[小原二郎]
ロッカー
主として衣類を収納する戸棚で、独立したものから数個連続したものまで各種の大きさが規格で決められている。
[小原二郎]
テーブル
脚の固定したものと折り畳み式のものとがある。甲板の大きさは規格により何段階かの種類が決められている。高さは70、67、64センチメートルの3種類がある。
[小原二郎]
間仕切
広い事務室を仕事の内容や性格に応じて分離、あるいは独立して作業する場合のために、手軽に組み立てられるようにつくられた壁面で、固定壁と同じ役目をするものと、簡易な障壁の形式とがある。規格によって寸法が決められていて、室空間との整合に不都合が生じないよう考慮されている。
[小原二郎]