翻訳|table
食事、応接、会議などに使う台形の家具で、脚と甲板(こういた)からできている。和名では卓または卓子と書く。卓と机とはよく似ているが、前者は方向性がないもの、後者は方向性があるものとして区別すると、わかりやすい。
[小原二郎]
テーブルの主要なものは、次のようである。
[小原二郎]
甲板の形には長方形、方形、楕円(だえん)形、円形などがある。甲板を折り畳むものや、引き出して広く使うものもある。材料としては家庭用はほとんど木材で、ナラ、ブナ、サクラ、カバなどが使われる。実用品として甲板の表面にメラミン化粧板を張り付けたものが普及しているが、最近では木製のものに人気がある。高級品にはチークやウォールナットの化粧板が使われる。標準的な寸法は1人分として幅60センチメートル、奥行45~50センチメートルを見込めばよい。甲板の高さは60~70センチメートルが適当である。
[小原二郎]
甲板の形は長方形のものが多い。材料は食事用テーブルとほぼ同じであるが、高級なものが好まれる。甲板の高さは40~60センチメートル程度である。
[小原二郎]
古代エジプトではテーブルは神への供物用と貴族の食事用が基本形であった。ギリシアでも両者は同じ形をしている。古代ローマでは木材のほかにブロンズや大理石のテーブルがつくられ、脚には彫刻が施されてしだいに豪華になった。
中世になると甲板と脚とを分解できる食卓がつくられた。ルネサンス時代には甲板は脚に固定され、豊富な装飾彫刻が施された。さらにバロック時代になると象眼(ぞうがん)、寄木、塗金が加わっていっそう豪華なものになった。しかし19世紀に入ると、装飾性よりも機能性が重視されるようになり、形は単純になっていった。
[小原二郎]
卓の始めは祭祀(さいし)用、食事用で、台盤(だいはん)や案(あん)がその基本形であった。のちに経机がつくられ、室町時代に出文机(だしふづくえ)が現れて、筆記用のものとして分かれていった。
[小原二郎]
平らな板を脚,支柱または側板で支持した形式で,食事または作業用に使う台。日本では〈卓〉〈卓子〉という。ラテン語のタブラtabulaが語源で,西洋においては椅子とならんで家具のなかで最も基本的な種目の一つである。古代エジプト第17王朝の木製テーブルは歴史上最も古い遺品の一つで,長方形の甲板を4脚の角柱で支え,脚の補強に貫(ぬき)を用いている。また第5王朝時代の浮彫には長方形の4脚式供物用テーブルが認められ,供物用のほかに食卓用としても使用されていた。エジプトのテーブルは古王国から新王国の時代に至るまでほとんど形式上の変化はみられなかった。ギリシアでは,4脚式から3脚式に変わり,主として食事用として用いられた。ローマ時代には,テーブルの甲板は円形,正方形,長方形があり,これらを支える脚は1~4脚式と多種多様な形式が現れたが,3脚式の円テーブルが多く使用された。材質も木材のほかに大理石やブロンズが用いられ,豪華な彫刻装飾が脚部などに施された。
中世になると,テーブルは大型になり,甲板と脚が分離できる架脚式の構造になった。領主館では食事は大広間で一族郎党とともにとり,食事が終わると大型のテーブルやベンチは片づけられた。ルネサンス時代になると,上流貴族の邸館に食事専用のダイニング・ルームが設置されるようになったので,テーブルの甲板と脚と貫は固定され,4脚式または6脚式の豪華なテーブルが流行した。またフランスやイギリスでは,テーブルの甲板の下部に挿入された2枚の中板を左右に引き伸ばして2倍の大きさに拡大するエクステンション・テーブル,肘かけ椅子または長椅子の背を前に倒すとテーブル甲板となるチェア・テーブルchair table,セツル・テーブルsettle tableなども現れた。
17世紀後期から18世紀にかけて,生活様式の多様化と住宅内に使用目的の異なる多くの部屋が設置されるにつれて,テーブルの種類も増加し,配膳用のサイド・テーブル,読み書き用のライティング・テーブル,化粧用のドレッシング・テーブル,裁縫用のワーク・テーブル,カード遊びやチェスに用いられる,引出しや燭台の設備を備えたゲーム・テーブルなどが現れた。宮殿や上流階級の大広間の壁面を飾るコンソール・テーブルはバロック時代に流行し,窓と窓の間の壁面に固定され,大理石の甲板の上には陶器や胸像などが載せられた。18世紀にはフランスの上流階級の間でコーヒーの飲用が盛んになり,専用のコーヒー・テーブルも生まれた。とくにルイ15世が使用した〈タブル・ア・カフェtable à café〉は,セーブルの陶板を甲板に飾り,金めっきのブロンズ製把手を左右に付け,下部にはポットなどを載せる棚を備えた小型のテーブルであった。一方,イギリスの上流家庭でお茶を飲用するようになったのは18世紀後期のことで,そのためのティー・テーブルはチッペンデールなどによってデザインされた。三脚台に太い支柱を載せその上に円形の甲板をのせた形式が18世紀の代表的なティー・テーブルである。18世紀末には大・中・小の4脚式テーブルを三つないし四つ組み重ねた形式のネスト・テーブルnest tableとよぶサービス用テーブルも流行した。また,婦人が朝食など軽い食事をとるため婦人部屋専用の魅力に富んだテーブルが考案された。これは脚先にキャスターが取り付けられ,甲板の左右が折畳み式になったもので,ペンブルック・テーブルPembroke tableと名付けられている。また,ソファ・テーブルと名付けられたテーブルは軽食や飲物をとるためのテーブルで,ペンブルック・テーブルと同じ機能を備えている。ゲートレッグ・テーブルgateleg tableもイギリスの17世紀以来流行した代表的な食事用テーブルで,甲板の左右が折畳み式,脚は挽物加工され,広く庶民階級の間で支持された。19世紀末から20世紀になると,テーブルは装飾的なものから機能性を重視する傾向を示した。テーブルの甲板にはオーク,ウォルナット,マホガニー,シーダー,黒檀など良質の,色や木目の美しい木材が用いられるが,ウォルナットの地板に精巧な花模様や幾何学模様を寄木細工であしらった飾り板も用いられる。イタリアでは色大理石や貴石類を組み合わせて模様を構成した〈ピエトラ・ドゥーラ〉とよぶ飾り板も使われる。テーブルの甲板は装飾性のほかに,耐水性,耐熱性,耐薬性,耐圧性などの性質を備える必要があるので,大理石,ブロンズ,陶板のほか,パーティクルボードにメラミン化粧板をはったものやプラスチックにガラス繊維をいれたものなどが使われている。
→机
執筆者:鍵和田 務
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
…西方へはローマ帝国によりヨーロッパ全域とイギリスに伝えられ,中世以後すべての階層に流行した。升目は細長い三角形に変化しターブルtable,タボラtavola,トリックトラックtrictrac,プッフシュピールPuffspiel,テーブルtable,17世紀以後はバックギャモンbackgammonなどと異なった名称で呼ばれているが,すべて同一のゲームである。バックギャモンは,現在でもヨーロッパから中近東にかけて最もよく行われている盤上ゲームである。…
…西方へはローマ帝国によりヨーロッパ全域とイギリスに伝えられ,中世以後すべての階層に流行した。升目は細長い三角形に変化しターブルtable,タボラtavola,トリックトラックtrictrac,プッフシュピールPuffspiel,テーブルtable,17世紀以後はバックギャモンbackgammonなどと異なった名称で呼ばれているが,すべて同一のゲームである。バックギャモンは,現在でもヨーロッパから中近東にかけて最もよく行われている盤上ゲームである。…
※「テーブル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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