金庫(読み)きんこ

精選版 日本国語大辞典 「金庫」の意味・読み・例文・類語

きん‐こ【金庫】

〘名〙
① 金銭や財宝を保管しておく倉庫。かねぐら金蔵。また、比喩的に資金などの出どころ。
※西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉初「両院の議事官は合衆国の金庫より給料を受け」
② 金銭、財宝などの貴重品や重要書類などを保管し、火災、盗難などから防ぐ装置を設けてある(鋼鉄製などの)箱または室。
風俗画報‐二〇九号(1900)本町「大倉金庫店 四丁目九番地にありて金庫を製造販売す」
③ 現金出納の主体としての国家または公共団体。あるいは、国や公共団体の現金出納機関。
④ 金融企業形態の一つ。特別な種類または範囲の金融を営む金融機関農林中央金庫商工組合中央金庫労働金庫信用金庫など。
⑤ 政府の出資で、社会政策的または国策的な目的の金融を営むために設立された金融機関。第二次世界大戦前および戦時中の庶民金庫戦時金融金庫戦後の復興金融金庫など。

かな‐ぐら【金庫】

※人情本・春秋二季種(1844‐61頃)二「内をから明にして金蔵(カナグラ)が不用心だハ」

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デジタル大辞泉 「金庫」の意味・読み・例文・類語

きん‐こ【金庫】

金銭・財宝を保管するための倉庫。かねぐら。
現金・重要書類・貴重品などを盗難や火災から守り安全にしまっておくための鋼鉄製などの箱や室。
国または地方公共団体の現金出納機関。
特別法によって設立された特殊金融機関の名称。農林中央金庫商工組合中央金庫の二つがある。信用金庫労働金庫は一般の金融機関
[類語]銀行公庫バンク

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改訂新版 世界大百科事典 「金庫」の意味・わかりやすい解説

金庫 (きんこ)

金銭や貴金属類,重要書類などを安全に保管するための室,あるいは箱。盗難や火災から守るため,各種の仕掛けが施されている。銀行の金庫室はその代表的なもので,きわめて大がかりな扉を開閉するようになっているが,近年は書類や磁気テープなどの情報源の保管の重要性が増し,金庫の構造も多様化している。単独の箱型の金庫にはJIS規格による耐火性能試験があり,防盗性能については,ガスバーナーによる溶断試験,ドリルによる穿孔試験,鋼球落下による衝撃試験などを業界で実施している。

貴重品を保管する方法は古くから考えられていたが,防犯・防災の機能が備わったといえるのは19世紀になってからである。それまでは硬質のオーク材の箱を鉄のベルトで補強したものなどが用いられていたが,1820年ころフランスで,鉄を二重ばりにし,その間に防熱材を詰めた金属製金庫が作られたという。30年代にはイギリスのC.チャブやブリキ職人のミルナーThomas Milnerが鉄ばりの金庫を製作した。40年にミルナーは,アルカリ溶液を入れたチューブで火災時には蒸気を出して炎上を防ぐ金庫も考案している。しかし67年にダイナマイトが発明されると,爆破に対しても備えなければならなくなり,ニッケル鋼やクロム鋼などを用いた分厚い壁を備えた金庫室が作られるようになった。1915年にはアメリカのルイジアナの銀行で,特殊鋼製の金庫室が酸素アセチレンで焼き切られる事件が発生し,コンクリートと鉄鋼を併用するなどの対策を迫られた。また,錠前破り対策としては,D.フィッツジェラルドによる数字や文字を組み合わせる符合錠(コンビネーション・ロック)の開発,J.サージェントによる一定時間作動するタイム・ロックの考案が画期的といえる。

 日本では江戸時代,千石船に積まれていた船簞笥(ふなだんす)に盗難や難破に対するくふうがこらされていた。商家では千両箱が使われていたが,1866年(慶応2)の横浜大火の際,外国商館の鉄ばり金庫に保管されていたものが難を免れ,注目をあびるようになった。そこで69年(明治2)に,神奈川の竹内弥兵衛が洋風金庫を製造販売しだしたという。〈弗箱(ドルばこ)〉の名で知られたが,のちには泥棒除けにもなるところから〈泥箱〉とも呼ばれた。大正時代には鋳鉄製の金庫の量産が可能になり,1923年の関東大震災で金庫の役割が再認識されたが,第2次世界大戦中は金属統制のため製造中止となっていた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金庫」の意味・わかりやすい解説

金庫
きんこ

これには,国または地方公共団体の現金出納機関としての金庫と,金融企業形態の一つとしての金庫とがある。前者には,固有金庫制度,委託金庫制度,預金制度の別がある (会計法 34,地方自治法 235,地方自治法施行令 168など) 。後者の金庫は,営利を目的とする銀行その他の金融機関の融資が困難と思われる対象に対して,社会政策的ないし国策的な目的で金融を行うために設けられるもの。現在,農林中央金庫 (大正 12年法律 42号) ,商工組合中央金庫 (昭和 11年法律 14号) がある。このほか,一般的企業形態として,一種の協同組合の性格を有する中小企業金融のための信用金庫 (昭和 26年法律 238号) ,労働金庫 (昭和 28年法律 227号) がある。

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普及版 字通 「金庫」の読み・字形・画数・意味

【金庫】きんこ

金ぐら。

字通「金」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の金庫の言及

【貯金箱】より

…なお,古代中国には通貨とされた子安貝を蓄える貯貝器(ちよばいき)があり,雲南省の石寨山古墓(せきさいさんこぼ)などから青銅製のものが出土している。現存する世界最古の金庫であり,貯金箱であろう。【高田 公理】【殖田 友子】。…

※「金庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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