歌舞伎(かぶき)用語。楽屋の割り振り方は、俳優の階級や役柄によって定められていた。名題(なだい)より下級の俳優は個別の部屋をあてがわれることはなく、3階に設けられた板の間の大部屋に雑居した。「相中(あいちゅう)」「中通(ちゅうどお)り」などとよばれた下回りの俳優たちは、この大部屋で扮装(ふんそう)をした。そこで、これらの俳優のことを「大部屋」とよぶ習慣が生まれた。また、その場所から、「三階」「三階さん」の呼び名も行われた。場所が広いため、各種の行事や儀式、あるいは稽古(けいこ)などにもこの大部屋を使った。古くは大部屋の構造や形式に型があり、各劇場共通だったが、現在はとくに定まっていない。しかし、下回りの俳優をさす「大部屋」「三階さん」の呼称だけは、歌舞伎に限らず映画の分野でも使われている。
[服部幸雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…先行の能舞台を踏襲していたもっとも初期の歌舞伎劇場では,能舞台と同様に〈後座(あとざ)〉の背後を,はじめは幕で,次いで板で囲って俳優の共同のたまり場としていた。しかし,俳優の役柄が立役,女方とわかれ,さらに身分がこまかく区分されていくにしたがい,座頭(ざがしら)や幹部俳優の個室,大部屋などがつくられ,また裏方もおのおのの職掌にもとづいて頭取部屋,作者部屋,囃子,大道具,小道具,衣装部屋……などの個室をそれぞれ必要とするようになり,頭取がそれらのすべてを総括した。こうして明治末期ころまで歌舞伎劇場の楽屋は,きびしい規律によって秩序が保たれていたのである。…
※「大部屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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