交通事故によって親を失った児童。両親を失った場合はもとより,その多くは父親を失い,母子家庭として公的な援助を必要とする者が多い。1960年代以降の産業化社会の進展による交通事故の激増に伴い登場してきた社会的問題の一つといえる。もっとも多い道路交通事故にしても加害者による補償では補えず,生活保護を受けている母子家庭もあるが,今日まだ十分な公的施策がととのわず,民間の救済運動に依存している現状である。その大きなものに交通遺児育英運動があげられる。〈交通遺児をはげます会〉(1967年発足。71年全国協議会を結成)が運動の一環として実施しているもので,財団法人交通遺児育英会(1969年設立)が主体となって募金活動を行い,交通遺児のための進学育英資金を集めるとともに交通遺児とその家庭の実情を社会に訴え,その基本的な問題の所在を明らかにする役割を果たしている。交通遺児家庭を含めて,生別・死別を問わず,母子家庭・父子家庭対策の一貫した施策の確立が望まれるところである。
執筆者:永田 幹夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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