日本大百科全書(ニッポニカ) 「人口地理学」の意味・わかりやすい解説
人口地理学
じんこうちりがく
地理学の一分科。地理学の研究対象は地域であり、地域の構成要素の一つとしての人口現象を研究して、究極的には地域構造を明らかにする学問。各地域の人口現象は、その地域固有の自然現象のほかに、そこに展開された独自の政治、経済、社会的現象と深いかかわりをもつ。ここで人口現象というのは、地域内の人口変動(増減)であり、その人口変動は自然変動(出生と死亡との差)と、社会変動(流入と流出との差)との和によっておこる。なかでも地域内および地域相互間の人口移動が重要な要因である。その際、人口を単に数(量)だけからではなく、質の面、すなわち男女別、年齢別、人種別など生得的要素をはじめ、居住地別、結婚状態別、学歴別などの社会的要素、産業別、労働力別などの経済的要素、宗教別、言語別などの文化的要素などからくる住民特性を問題とする。人口地理学の発達は、主として第二次世界大戦後のことであり、先進国、発展途上国ともに流動的な社会となり、まず人口の都市集中に始まり、とくに先進国では都市間移動も盛んで、こうした人口の地域間移動によって、都市、農村ともに地域の変容が急速に顕著に現れ始めたことと関連する。
[岸本 実]