人為選択ともいわれる。家畜,作物など飼育,栽培の下にある生物について,〈より良好な〉形質をもつ個体を次世代の親として選ぶことは古くから行われていて,その結果として品種の改良や新品種の作出ができることが知られていた。C.ダーウィンが進化のしくみを考えるうえで,また進化論を納得させる手段として,この事実に注目して自然淘汰説を立てたという事実は有名であるが,ダーウィン以後はこのような人間の意図的な選択過程を,自然淘汰と区別して,人為淘汰と呼ぶようになった。ただし,過去の品種改良などがどれほど結果を予見して意図的になされたものかは明らかではなく(ダーウィンはその多くは意図的でなかったと考えて〈無意識の淘汰〉と呼んでいる),その意味で人間の関与した淘汰,例えば狩猟の結果として猟獣が小型化することや雑草の形質変化などをすべて人為淘汰と呼ぶこともある。しかし,今日の地球上では人間の影響を受けていない生物はないのであるから,人為淘汰という言葉をあまり広義にとらえないほうがよいであろう。
執筆者:浦本 昌紀
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
… 今日,この言葉はいくつかの意味に用いられている。その中で最も広義なものは,〈自然によって行われる〉淘汰という意味であり,人間によって(意図的に)行われる〈人為淘汰〉に対立するものである。もちろん,〈自然によって〉というのは比喩的な表現であるが,この表現には〈超自然(=神)によってではない〉という唯物論的な思想もこめられている。…
※「人為淘汰」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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