伊奈浦(読み)いなうら

日本歴史地名大系 「伊奈浦」の解説

伊奈浦
いなうら

中世にみえる地名で、古代の伊奈郷の郷名を継承する伊奈郡の主邑。文永七年(一二七〇)正月日の太政官牒(本朝文集)に「対馬島伊奈浦」とみえ、去年九月一七日申の時に異国船一隻が来着したと大宰府が報告している。このとき高麗使の金有成・高柔らが対馬の答二郎・弥二郎を返還している(「関東評定衆伝」同六年条)。弥次郎らは、同年二月フビライの派遣した黒的ら国使八人と高麗使四人・従類七〇余人が対馬豊岐とよさき浦に着岸したとき国書を受取らなかったため、捕虜として連帰った者であるといい(「元史」日本伝至元五年九月条、「蒙古来使記録」賜蘆文庫古文書所収称名寺文書)、この二人はモンゴルの大都でフビライに面謁(「東国通鑑」順孝王一〇年七月甲子条)、第三回目の使者とともに同年九月に伊奈浦に到着したのである。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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