ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「伊藤正己」の意味・わかりやすい解説
伊藤正己
いとうまさみ
[没]2010.12.27. 東京
英米法学者,憲法学者,最高裁判所判事。1943年東京帝国大学法学部を卒業,その後特別研究生となり,当時は敵国であったイギリス,アメリカ合衆国の法律の研究を続けた。第2次世界大戦後の 1948年東京大学助教授となり,1954年からアメリカのハーバード大学,スタンフォード大学に留学,帰国後の 1957年に東大教授に就任し,新憲法のもとでのさまざまな制度改革に関する研究を行なった。1959年に発表した『言論・出版の自由――その制約と違憲審査の基準』は高く評価され,日本学士院賞を受賞。1980~89年最高裁判所の裁判官を務め,言論・表現の自由に関する主要な憲法裁判にかかわった。信教の自由,政教分離の原則が問題となった「自衛官合祀訴訟」の大法廷判決(1988)では,合憲判決にただ一人反対意見を表明するなど,独自の立場から卓越した意見を述べた。1994年文化功労者に選ばれ,1999年文化勲章を受章した。
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