金属材料は温度低下とともに引張強さ,降伏強さ,硬さなどが徐々に増加するが,伸び絞りは低下し,衝撃的に応力を加えると,ある温度以下で急にもろく破壊しやすくなる場合がある.この脆化現象を低温脆性とよび,靭性状態から脆性状態に変化する温度を遷移温度という.体心立方格子をもつ金属および合金に共通して現れる現象で,降伏強さの温度依存性が大きく,低温になると降伏強さがへき開破壊応力を超えるために起こると考えられている.この現象は,鉄鋼材料では大きな問題であり,とくに溶接構造物で現れやすく,溶接による熱影響や残留応力,構造的切欠きなどに原因して割れが発生して伝搬し,大事故となりやすい.結晶粒を微細化するか,Niを添加すると遷移温度は低下し,CやPが増すと上昇する.また,焼入れでマルテンサイト組織にした後,十分に焼戻しをほどこすと低温脆性はいちじるしく改善される.銅,アルミニウム,ニッケルなど,および鋼でも18-8ステンレスのような面心立方晶の場合は低温脆性は現れない.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
通常の温度では延性材料とみなされる金属材料が、低温になると脆(もろ)く破断するようになる現象。体心立方晶や稠密(ちゅうみつ)六方晶の金属によくみられ、アルミニウム、銅、オーステナイト系ステンレス鋼などの面心立方晶の金属には生じない。鉄鋼材料の低温脆性はよく知られており、冬の気温程度の温度を境に脆性破壊を呈するようになる。破壊の伝播(でんぱ)速度はきわめて大きく、大型の鉄鋼構造物を瞬時に破壊に導く危険性をもつ。低温脆性を調べる試験には衝撃試験が用いられ、材料が破断するまでに吸収するエネルギーが、ある試験温度を境に急激に低下する。この温度は遷移温度とよばれ、不純物や合金元素の量、溶接などの加熱履歴や放射線の照射により変動する。
[林 邦夫]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ガラスや陶器といったいわゆる脆性材料が脆性破壊を起こすのはともかく,工業上問題となるのは,通常破壊に至るまでにかなりの塑性変形を伴う延性的な破壊挙動を示す金属材料が,条件によって脆性的な破壊挙動を示す場合があるということである。一般的には,亀裂状の欠陥の存在による高い応力集中,低温下における材料の延性の低下(低温脆性low temperature brittleness,cold shortness),および水素などによる材料に対する悪環境等が問題となる。このために引張強度,降伏応力等の機械的性質からのみ設計された構造物が大きな破壊事故に至った場合も多い。…
※「低温脆性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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