(読み)つらつら

精選版 日本国語大辞典 「倩」の意味・読み・例文・類語

つら‐つら【倩・熟】

  1. 〘 副詞 〙 ( 「と」を伴って用いることもある。古くは「に」を伴うこともあった ) 物ごとを念を入れてするさまを表わす語。つくづく。よくよく。念入りに。
  2. (イ) じっと見つめるさま。熟視するさま。
    1. [初出の実例]「巨勢(こせ)山のつらつら椿都良々々(ツラツラ)に見つつしのはな巨勢春野を」(出典万葉集(8C後)一・五四)
  3. (ロ) 物事を深く考えるさま。熟考するさま。
    1. [初出の実例]「伝燈の良匠にあらずして、強ひて訂(ツラツラ)この事をかへりみる」(出典:日本霊異記(810‐824)下)
  4. (ハ) 深く嘆き、また反省するさま。
    1. [初出の実例]「つらつらと歎き居たり」(出典:今昔物語集(1120頃か)二六)
  5. (ニ) よく寝入るさま。ぐっすり。
    1. [初出の実例]「男も草臥て、つらつら寝入ければ」(出典:仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)三)

倩の補助注記

( 1 )(イ)の「万葉集」の例は「連連(つらつら)」の意とする説もある(万葉集略解・万葉集古義・大言海など)。
( 2 )中世には、記録資料をはじめ、「平家物語」など記録体の影響を受けた文学作品に、「倩」の表記が見られる。この字は漢籍では美しく笑うさま、あるいは、男子の美称であり、この「つらつら」との結び付きの由来はわからない。


せん【倩】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用タリ 〙 美しく愛らしいさま。うるわしいさま。みずみずしいさま。倩倩
    1. [初出の実例]「巧笑倩(セン)兮」(出典:文明本節用集(室町中))
    2. 「願はくは花の御姿、匂ふ袂こち向けて、巧笑の倩(セン)たる、美目の盻(へん)たる」(出典:置炬燵(1890)〈斎藤緑雨〉中)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「倩」の読み・字形・画数・意味


10画

[字音] センセイ
[字訓] みめよし・やとう

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(青)(せい)。〔説文〕八上に「人の美(よ)き字(あざな)なり」(段注本)とあり、人の美好の意で、男の字に用いた。漢の望之・東方朔はいずれも字を曼倩という。曼は眉目の清きもの、倩は口もとのよろしきものの意。東斉では壻を倩とよんだ。士の美称とすることがある。

[訓義]
1. みめよし、口もとよし、うるわし。
2. 男の字(あざな)に用いる。
3. 請と通じ、やとう。
4. 国語で、「つらつら」とよむ。

[古辞書の訓]
名義抄〕倩 ツラツラ・アトフ・アツラフ・トモ・カル・モトム・アザヤカナリ・シタリ・ヤトフ・タチマチ

[語系]
倩tsieng、壻syeは声近く、胥・siaも同系の語。胥・は人の才知あるものをいう。

[熟語]
倩粧倩人倩影・倩・倩倩・倩
[下接語]

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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