精選版 日本国語大辞典 「倩」の意味・読み・例文・類語
つら‐つら【倩・熟】
- 〘 副詞 〙 ( 「と」を伴って用いることもある。古くは「に」を伴うこともあった ) 物ごとを念を入れてするさまを表わす語。つくづく。よくよく。念入りに。
- (イ) じっと見つめるさま。熟視するさま。
- (ロ) 物事を深く考えるさま。熟考するさま。
- [初出の実例]「伝燈の良匠にあらずして、強ひて訂(ツラツラ)この事をかへりみる」(出典:日本霊異記(810‐824)下)
- (ハ) 深く嘆き、また反省するさま。
- [初出の実例]「つらつらと歎き居たり」(出典:今昔物語集(1120頃か)二六)
- (ニ) よく寝入るさま。ぐっすり。
- [初出の実例]「男も草臥て、つらつら寝入ければ」(出典:仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)三)
倩の補助注記
( 1 )(イ)の「万葉集」の例は「連連(つらつら)」の意とする説もある(万葉集略解・万葉集古義・大言海など)。
( 2 )中世には、記録資料をはじめ、「平家物語」など記録体の影響を受けた文学作品に、「倩」の表記が見られる。この字は漢籍では美しく笑うさま、あるいは、男子の美称であり、この「つらつら」との結び付きの由来はわからない。