日本大百科全書(ニッポニカ) 「備中神楽」の意味・わかりやすい解説
備中神楽
びっちゅうかぐら
岡山県高梁(たかはし)市の成羽(なりわ)町、備中町や、井原(いばら)市の美星(びせい)町と芳井(よしい)町、小田郡の矢掛(やかげ)町などに伝わる神楽。11月から翌年2月にかけて行われる。宮(みや)神楽と荒神(こうじん)神楽の2種類がある。宮神楽は多く毎年の氏神祭の宵宮(よいみや)に神社の拝殿で「岩戸開(びらき)」「国譲り」「八重垣(やえがき)(大蛇(おろち)退治)」の神能(しんのう)三番を演じる。この三番は文化・文政(ぶんかぶんせい)期(1804~1830)の国学者西林国橋(にしばやしこっきょう)の創案になる神話劇。人気を得て祭りの奉納神楽となった。荒神神楽は同族もしくは集落単位の荒神祭りで、7年目ごとや13年目の式年祭に神殿(こうどの)という祭場を野外に特設して盛大に行う。「白蓋(びゃっかい)行事」などの神事や前記の神能のほか「布舞(ぬのまい)」と「綱舞(つなまい)」では神がかりによる託宣を行うなど古態を残す。国指定重要無形民俗文化財。
[渡辺伸夫]
『山根堅一・坂本一夫著『備中神楽』(日本文教出版社・岡山文庫)』