日本大百科全書(ニッポニカ) 「成羽」の意味・わかりやすい解説
成羽
なりわ
岡山県西部、川上郡(かわかみぐん)にあった旧町名(成羽町(ちょう))。現在は高梁市(たかはしし)の一地区。1901年(明治34)東成羽村が町制施行して成立。1906年成羽村、1955年(昭和30)中村と合併、同年吹屋(ふきや)町を編入。2004年(平成16)高梁市、有漢(うかん)町、川上町、備中(びっちゅう)町と合併、高梁市となる。旧町域は、吉備(きび)高原上にあり、東流する高梁(たかはし)川支流の成羽川沿いなどに小平地が開け、国道313号が通じる。中心の成羽地区は、近世初期一時成羽藩が置かれたが、そのあとには交替寄合(こうたいよりあい)山崎氏5000石の陣屋町。川上郡の中心であった。農林業のほか、畳糸製造などがある。成羽美術館には町出身の児島虎次郎(こじまとらじろう)の洋画のほか、県出身の洋画家の作品などを所蔵、虎次郎遺愛の古美術品や成羽植物群の化石なども陳列されている。吹屋地区は平安時代から銅を採掘し、鉱山町として栄えたが、1972年閉山。江戸末期から明治にかけての建物の多い町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区で、商家を利用した吹屋ふるさと村がある。旧備中(びっちゅう)国一円に伝わる備中神楽(かぐら)(国の重要無形民俗文化財)保存会がある。中生代三畳紀後期の植物群化石である成羽植物群が分布する。
[由比浜省吾]
『竹内明照著『成羽史話』(1965・成羽町)』