矢掛(読み)やかげ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「矢掛」の意味・わかりやすい解説

矢掛(町)
やかげ

岡山県南西部、小田郡の町。1896年(明治29)町制施行。1954年(昭和29)美川(みかわ)、三谷(みたに)、山田、川面(かわも)、中川の5村、1961年小田町(1925町制)と合併。高梁(たかはし)川水系の小田川、美山(みやま)川の流域で、河床が浅いためたびたび水害をこうむった。旧山陽道が東西に走り、中心集落の矢掛は近世宿場町として栄え、美川、三谷、川面などはその助郷(すけごう)村であった。町並みは当時のおもかげを残しており、旧矢掛本陣石井家住宅と旧矢掛脇(わき)本陣高草(たかくさ)家住宅は国指定重要文化財、とくに石井家は全国指折りの宿駅史料を伝えている。井原(いばら)鉄道、国道486号が通じる。ナシ、ブドウ、イチジクなど果樹栽培が盛んで、農業体験施設「水車の里フルーツトピア」がある。そのほか、縫製業、自動車部品製造、家具製造などが行われる。小田川流域に勢力をもった奈良時代の豪族下道氏墓(しもつみちうじのはか)は国指定史跡。美山川沿いには国指定名勝の鬼ヶ嶽の渓谷がある。面積は90.62平方キロメートル、人口1万3414(2020)。

[由比浜省吾]


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改訂新版 世界大百科事典 「矢掛」の意味・わかりやすい解説

矢掛[町] (やかげ)

岡山県南西部,小田郡の町。人口1万5092(2010)。高梁(たかはし)川の支流小田川中流域に位置する。北部と南部は吉備高原山地が占め,中央部は地溝帯の低地で,小田川が東流し,川沿いに平野が開ける。小田川と美山川の合流点にある中心集落の矢掛は山陽道の旧宿場町で,本陣,脇本陣(ともに重要文化財)が現存し,切妻造の商家が多い。交通の要地でもあり,小田川には河港があった。町域西端の小田は間の宿で,小田川の高瀬舟遡航の上限であった。米作,野菜栽培を中心とした農業が基幹産業であるが,大部分が兼業農家で規模は小さい。特産にマツタケ,そうめんがある。井原鉄道線が通り,吉備真備(きびのまきび)ゆかりの下道(しもつみち)氏の墓(史)がある。美山川上流の鬼ヶ岳(名)や南部の遥照山,竹林寺山は観光地で,竹林寺山東峰に東京大学岡山天体物理観測所(現在は国立天文台の観測所)がある。
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百科事典マイペディア 「矢掛」の意味・わかりやすい解説

矢掛[町]【やかげ】

岡山県南西部,小田郡の町。主集落矢掛は山陽道の宿場町,小田川河港として発達。農林業を営み,麩(ふ),そうめんなどの食品,繊維,木製品などを生産,マツタケを特産。90.62km2。1万5092人(2010)。

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