荒神神楽(読み)こうじんかぐら

日本大百科全書(ニッポニカ) 「荒神神楽」の意味・わかりやすい解説

荒神神楽
こうじんかぐら

岡山県備中(びっちゅう)地方と広島県備後(びんご)地方などで荒神信仰に基づいて行われる神楽同族もしくは集落単位で祀(まつ)る荒神(祖霊神)の祭りで、7年目、13年目の秋から冬にかけての式年祭には当番組の田や畑の上に神殿(高殿)(こうどの)と称する仮屋(かりや)を設け、これを舞台として徹夜で行う。神殿神楽ともいう。4日から7日間に及ぶ盛大なもので、神殿には天井から白蓋(びゃっかい)と称する天蓋を吊(つ)り下げる。神楽は出雲(いずも)流の神楽で、「榊舞(さかきまい)」などの採物(とりもの)の舞と「天岩戸(あまのいわと)開き」「国譲り」「大蛇(おろち)退治」などの神能(しんのう)からなるが、「動座・鎮座」(白蓋神事)や「託宣」などの神事的な要素が多い。神がかりによる託宣行事の「託舞」は、夜明けごろ、荒神の神座である藁蛇(わらへび)を舞台に張り渡し、これに託太夫をかからせて豊凶や災害などについて託宣を聞く。代表的なものに、岡山県高梁(たかはし)市の備中町や成羽(なりわ)町、広島県の庄原(しょうばら)市と神石(じんせき)郡神石高原町の神楽がある。

[渡辺伸夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「荒神神楽」の意味・わかりやすい解説

荒神神楽
こうじんかぐら

岡山県広島県のかつての備中国備後国美作国を中心とする地域の,荒神をまつる神楽。荒神には竈神屋敷神,同族神などさまざまあるが,いずれも荒々しい神で,少しでも祭りを怠るとたたりをなすとされている。秋の収穫後の 10~12月にかけて行なわれ,毎年の神楽と 7年や 13年,33年に一度の式年の大規模な神楽とがある。式年の神楽では,数日間の神楽の最後に,神憑りによる荒神の託宣が行なわれる。例えば広島県庄原市東城西城の 33年に一度の比婆荒神神楽(国指定重要無形民俗文化財)は,近年は 2日 1夜だが,本来は 4日 4夜の祭りで,「前神楽」「本神楽」「灰神楽」「御戸開き」の 4種の神楽からなる。このうち民家で行なわれる前神楽では神迎えをし,仮屋(神殿〈こうどの〉)で行なわれる本神楽では,神話劇のあと,わらでつくられた蛇体を使って「荒神舞納め」を行なう。この際,蛇体に寄りかかって舞う神柱(しんばしら)役の神職が,狂乱状態で神憑り,託宣をする。

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