兜(頭)巾 (ときん)
頭襟とも書く。修験者が額に付ける尖頭円型の被り物で,漆固めの布製や木製,樹脂製がある。起源は,防護・防寒用の頭巾(ずきん)らしい。《修験修要秘決集》などによれば,宝冠型の兜巾は大日如来の五智の宝冠にたとえられ,黒色は煩悩,襞(ひだ)は十二因縁を表し,凡聖不二にして,これをかぶる者は大日如来,不動明王と同体であると説く。兜巾のかわりに,白の晒(さらし)木綿で頭を包んで,先端を顔の左右に垂らす宝冠を用いる者もいる。
執筆者:鈴木 正崇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の兜(頭)巾の言及
【山伏】より
… 鎌倉・室町時代にはこの修験道の山伏たちは,吉野,熊野,白山,羽黒,彦山(英彦山)などの諸山に依拠し,法衣,教義,儀礼をととのえていった。歌舞伎の《勧進帳》などで広く知られる[鈴懸](すずかけ)を着,結袈裟(ゆいげさ)を掛け,頭に斑蓋や[兜巾](ときん)(頭巾),腰に螺(かい)の緒と引敷,足に脚絆を着けて八つ目のわらじをはき,[笈](おい)と肩箱を背負い,腕に[いらたか念珠]をわがね,手に金剛杖と[錫杖](しやくじよう)を持って[法螺(ほら)貝]を吹くという山伏の服装は,このころからはじまった(図)。またこうした法衣は教義の上では,鈴懸や結袈裟は金剛界と胎蔵界,兜巾(頭巾)は大日如来,いらたか念珠・法螺貝・錫杖・引敷・脚絆は修験者の成仏過程,斑蓋・笈・肩箱・螺の緒は修験者の仏としての再生というように,山伏が大日如来や金胎の曼荼羅([両界曼荼羅])と同じ性質をもち,成仏しうることを示すと説明されている。…
※「兜(頭)巾」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」