全断面掘削(読み)ぜんだんめんくっさく(英語表記)full face cutting

改訂新版 世界大百科事典 「全断面掘削」の意味・わかりやすい解説

全断面掘削 (ぜんだんめんくっさく)
full face cutting

トンネル掘削方式の一つで,トンネルの完成断面となる形状(全断面)を一度に掘削する方式。トンネルの完成断面がある程度大きく,しかも地質がとくに良好とはいえない場合には,底設導坑,上部半断面部分,大背,土平(とべら)/(どびら)などに分割して掘削が行われ,これを部分掘削工法といい,多くの場合に用いられる工法である。しかし,地質が十分に堅硬な場合やトンネル断面が比較的小さい場合には,最終必要な断面形状を一度に発破をかけて掘り崩す全断面工法が用いられる。この工法は,切羽(きりは)(トンネル先端の掘削作業現場)が1ヵ所ですみ,工事の能率はよいが,多数の削岩機を同時に働かせるための大型削岩ジャンボをはじめ,ずり積み機,一連の大型設備を用いないと実効は上がらない。また,もし途中で地質の悪いところに遭遇するなどして部分掘削工法に変更しなければならなくなった場合,全断面掘削用設備を全部替えなければならず,このため,全断面掘削工法の採用の決定には地質がトンネルの予定全区間にわたって良好であることを事前の地質調査で十分確認しておく必要がある。佐久間ダム建設のためアメリカから導入された全断面掘削工法は,鋼アーチ支保工の使用,大型高能率な各種建設機械の導入など,トンネル技術を一変させる衝撃を与えた。それ以後機材の国産化も進められ,全断面掘削は鉄道道路,あるいは水力発電に伴うトンネル掘削にしばしば用いられるようになった。最近では,上越新幹線大清水トンネル施工に用いられ,工期工費などの面で画期的な成果をあげた。
トンネル
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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