河川,湖沼などを利用して水を高い位置から急速に流下させ,その水の力で水車を動かし,これを動力として発電機を回転して電気を発生すること。すなわち水の位置エネルギーを水車によって機械エネルギーに変換し,これにより発電機を駆動して電気エネルギーを発生するものである。模型的に示せば河川を上流でせき止めて水を水路に取り,低こう配で下流に導水し,もとの河川との間に得られる水位差を利用して鉄管によって発電所に水を落とし,水車を回転させ,発電機を駆動させる。このほか水路で導水して水位差を得るかわりに,大規模なダムを築造して貯水しその水位差を利用する場合,あるいは両者を併用する場合などがある。
水力発電はアメリカ,ヨーロッパにおいては1882年ころにきわめて小規模なものが出現し,日本においては90年に足尾銅山その他に小規模のものが設置されたが,一般には92年に琵琶湖疏水を利用してつくられた蹴上(けあげ)発電所(当時京都府,現在関西電力所属。ただし,当時のものは置き換えられて今はない)が日本最初のものとされている。1997年現在世界最大の水力発電所はブラジルとパラグアイで共同開発したイタイプ発電所1260万kWである。日本では奥美濃発電所150万kWが最大規模の水力発電所であるが,揚水式発電所である。揚水を含めない一般水力発電では田子倉発電所38万kWが最大規模のものである。中国の三峡ダムは総出力1820万kWで,2009年完成の予定とされている。
日本の年降雨量は平均1700mmで,多い所では4000mmにも達し,世界有数の多雨国とされている。また河川も急こう配が多く水力発電に適した地点も多く,電気事業の初期から経済的なエネルギー源として開発されてきた。1960年代初期までは電力供給量の大半を水力発電が占めていたが,そのころから火力発電が水力発電による供給量を超え,いわゆる火主水従の時代に入った。これは水力開発自体残された地点が経済的に有利でなくなったことと,当時火力発電が技術の進歩により経済的になったことによる。また73年の石油危機以降は原子力発電が経済的な電源となり,積極的に開発されている。産業の急速な拡大に伴う電力需要の著しい増大には,大規模な単位で出力増加可能な原子力,火力の開発が必然であった。96年現在水力発電出力は約4200万kW(揚水2220万kW,一般1980万kW)で全発電設備の20.6%(揚水10.9%,一般9.7%)である。年間発電電力量は約880億kWhで全発電電力量の10.2%に当たる。
今後の水力発電の開発は有利な地点が少なくなってきているが,石油危機以降水力は重要な石油代替国内資源として,またクリーンな循環エネルギーとして長期的な視点にたった開発の推進が図られている。明治以来水力開発の可能性の調査(包蔵水力調査)が数次にわたって行われているが,通産省によれば,95年度末現在の一般水力発電所の開発可能な地点は全国で約2700地点,出力1230万kW,発電量460億kWhの規模となっている。1地点平均4500kWで,中小規模の流込み式が90%を占めている。なお,今後は治山,治水ならびに上水,農・工業用水などに発電が参加する総合開発の形をとることが多くなろう。また既設のダム・水路の活用や既設発電所の再開発なども図られることとなろう。
構造,運用方法,建物など分類の方法によりいろいろに分けられる。
(1)水路式発電所 河川をせき止めて直ちに取水し,比較的ゆるやかな水路で水を下流に導き,河川のこう配による落差を得て発電する方式である。(2)ダム式発電所 河川を横断してダムをつくり,ダム上流側の水位を上昇させて得られる落差を利用して発電する方式である。(3)ダム水路式発電所 ダムの水をいったん水路に取り,ダム水位の上昇分に下流河川のこう配をも加えて利用する発電方式である。なお,異なった流域をもつ他の河川との間の落差を利用する場合もある。
(1)流込み式発電所 水路式発電所に多く,河川流量を調整する池をもたない発電所で,河川流量に応じて発電する方式である。したがって,発電所の最大使用水量以上の河川流量は無効放流される。(2)調整池式発電所 河川に調整池を設けて,負荷の変動に応じて河川の流量を,日間あるいは週間で調整して使用する発電所である。(3)貯水池式発電所 河川に大ダムを設けて人造湖をつくり,あるいは天然湖を利用して洪水時や豊水期のあまった水をこれに貯留し,渇水期に補給するなど,年間を通じて河川流量を調整使用する発電所である。大出力発電所に多い。(4)逆調整池式発電所 大出力発電所は負荷調整が大きいから下流河川の水位変動が大きいので,下流に調整池式発電所を設けて,その発電出力を極力一定にし,下流放水量,すなわち水位を一定に保つよう発電する方式である。(5)揚水式発電所 上下に池をもち,下池の水をポンプで上池へくみ上げておき,昼間の重負荷時にこの水を利用して発電する方式である。
(1)屋内式発電所 水車,発電機などを建物内に設置したふつうの発電所である。(2)屋外式発電所 水車,発電機などを収容する建物を省略した発電所で,発電機は鋼板製の外被で覆われる。(3)半屋外式発電所 水車,発電機などを建物内におき,屋外の橋形クレーンによって組立てを行う発電所である。(4)地下式発電所 水車,発電機などを地下に設置する発電所である。日本においては(1)の屋内式が一般的であるが,土木技術の進歩により大きな空洞を地下に掘削できるようになったので,地質条件がよい地点には(4)の地下式が採用されることがあり,大規模な貯水池式や揚水式の発電所に多い。
いま,水車に流量Q(m3/s)の水が,有効落差H(m)により流入した場合,理論出力P0=9.8QH(kW)と定義される。有効落差とは,取水口水位と放水口水位との差(総落差)からこの間の水路,水圧管などの損失水頭を差し引いたもので,水車に有効に使用される落差である。水車および発電機の効率をそれぞれηt,ηgとすれば,発電機出力Pg=P0ηt・ηg=9.8QHηtηg(kW)であり,これに発電機台数を掛けたものが発電所出力である。ふつうηt=0.9前後,ηg=0.97前後である。ところで,河川の流量は流域内の雨や雪に依存し,季節的に変動するので,発電所の最大使用水量は年間を通じて発電がもっとも経済的となるよう決定される。また,ダム式の場合池の水位は河川の流況と発電所の使用水量によって上下に変動するので,年間の発電所の運用を検討し,水位の変動範囲を決め,その間の変動に対して発電所の運転に支障がないように設計が行われる。
水力発電所の土木設備としては,取水または貯水のためのダム,取水・導水のための取水口および導水路,導水中の土砂を沈降排出させるための沈砂池,導水路の末端と水圧管路との接続部に設けられる水槽またはサージタンク,水槽またはサージタンクから水車に導水するために敷設される水圧管路鉄管,水車を通った水を河川などに放流する放水路などがある。水車への水量の調整は弁の開閉によって行われ,また水車や発電機などの事故時に急速な閉鎖を行う。このため,水圧管路内の水の圧力は大幅に変化する。水圧管路は十分圧力に耐えるが,導水路に影響を与えてはならないので,導水路と水圧管路との接続部に緩衝用の水槽をおく必要があり,これがサージタンクである。
発電所建物には主機関係として水車室,発電機室,組立室などがあり,運転,制御関係の部室として配電盤室,継電器室,通信機械室,各種補機室などがある。そのほか必要に応じて事務室などがおかれる。
圧力水頭を速度水頭に変えた流水を,大気中においてランナーに作用させる水車を衝動水車という。ペルトン水車がこれに当たり,ノズルから流出するジェットをランナー周辺のバケットに作用させる構造である。これに対して圧力水頭をもつ流水をランナーに作用させる水車を反動水車と呼び,流水が半径方向にランナーに流入し,ランナー内において軸方向に向きを変えて流出する構造のフランシス水車,ランナーを通過する流水の方向が軸に斜めの斜流水車,ランナーを通過する水が軸方向に流れるプロペラ水車がある。また反動水車を逆方向に回転させることによりポンプ機能をもたせることができるので,このようにしたものをポンプ水車といい,フランシス形,斜流形,プロペラ形に分けられる。各形式の水車は落差,出力によっておおよその適用範囲が決まっている。一般的にはペルトン水車は250m以上の高落差,フランシス水車は35~250mの中落差,プロペラ水車は35m以下の低落差,斜流水車はフランシス水車とプロペラ水車にまたがった中低落差の各領域で使用される。水車の効率は定格出力付近で最高となり部分負荷で低下する。また過度の部分負荷ではランナー表面と水流の間が真空状態となり表面に潰食が進行する,いわゆるキャビテーションが発生するおそれがあるし,これがまた振動,騒音の原因となる。水車は小型の相似模型によって相似の水流中において試験を行い,効率,キャビテーションなどの特性のもっともよい水車形状を決めている。
突極形の回転界磁形同期発電機がもっとも広く用いられる。軸方向によって立軸形と横軸形に分けられる。立軸形の場合,案内軸受は上部と下部にあり,上部軸受はスラスト軸受と一体となった普通形が多い。スラスト軸受が回転子の下方にあって,上部案内軸受を省略した構造のものをかさ形発電機という。比較的低速度の発電機は外径が大きく扁平な形となりかさ形をとりやすい。かさ形とすることによって重量が軽くなるとともに,機械の高さが低くなり建物が低くなる,またスラスト軸受を分解しないで回転子をつり出すことができるなどの利点がある。大容量機では上部案内軸受を備えた,いわゆる半かさ形の例が増している。
発電機電圧は出力の大きいほど高くとられる。ふつう3kVから12kV,高いもので18kVまでである。回転速度は落差,流量ならびに水車の種類によっておおよその範囲が決まり,その範囲の中で周波数と磁極数から選定されるが,回転速度を高くするほど機械は小型となり経済的である。
常時運転中の水車発電機は,負荷変化に対して規定回転数を保つように水車への送水を自動的に加減調整する必要があり,制御のための調速機と流水を開閉調整する弁が設けられている。また発電機電圧を一定に保つよう励磁を調整する自動電圧調整装置が設けられるが,速応励磁により発電機の過渡安定度を向上させる機能を備えたものもある。
発電機電圧は10kV前後で,送電には低いので変圧器によって送電電圧まで高められる。このための変圧器,回路接続用の配線・スイッチ類(遮断器,並列用遮断器,断路器など),避雷器などの諸設備が必要である。また送電線の故障除去,発電所内の機器の万一の事故のとき,安全確実に発電所の一部または全部を停止するための保護継電器その他の保護装置が設備されなければならない。電圧を上げるのでこのような電気所を昇圧用変電所という。
水力発電所は起動停止,出力変化などが迅速,容易に行いうる特性をもっている。流込み式では流量に制約されて運転されるが,調整池・貯水池式では早い負荷応答特性を十分に活用して運転される。すなわち大出力発電所で平常時半負荷にしておき,電力系統内の電源脱落事故時に,短時間に出力を増加し電力系統の安定を図る目的で利用したり,また周波数を一定に保つため自動周波数制御に利用される。水車発電機の起動,停止などの運転は自動制御で配電盤室から行われる。計器による運転状況の監視も配電盤室で行われる。運転員は2~3名で1組となり昼夜3交替の勤務をする。しかしながら近年は数ヵ所の発電所を一つの制御所より運転制御する集中制御方式が一般化し,発電所そのものは無人化されることが普及している。
保守は設備の保安および機能の維持,改善を目的とするものであるが,日常の巡視点検,週間・月間・年間の点検,あるいは数年に1回の定期点検など規程にのっとって行われる。保守員は電気および土木の技術員が数名から10名程度のグループで,数ヵ所の発電所をまとめて巡回保守するのがふつうである。
執筆者:竹之内 達也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
水の位置エネルギーを運動エネルギーに変え、そのエネルギーを利用して発電する方式。水力発電を行う設備を水力発電所といい、一般に設備が設置されている場所の固有名称がつけられて、○○発電所と称している。この方式は、河川の水をダムでせき止めるか、または本流に沿って長い水路をつくるかして得られる水位の高低差を利用し、高所から水を管路(水圧管)で導き、水車を駆動し、水車に直結した発電機で発電する。日本の水力発電の歴史は、1890年(明治23)に栃木県の足尾鉱山(400馬力)および下野麻(しもつけあさ)紡績(65馬力)の自家用として発電したのが最初で、一般供給用は、1891年に琵琶湖(びわこ)の疎水工事をおこし、蹴上(けあげ)発電所(直流発電機出力80キロワットと1300灯用単相交流発電機=電線2本で電灯1300個に供給する交流発電機)をつくり京都市の電灯・電力用に送電したのが最初である。蹴上発電所の成功により、各地で至近距離に送電する方式が企てられた。その後、電力需要もしだいに増加し、電圧を自由に変えて遠距離送電を容易にする三相交流発電方式(電線3本で供給する方式)を主体に水力発電が急激に発展し、山間の有利な水力地点で発生した電力を遠隔地の都市に送電するようになった。その代表的なものとして1907年(明治40)に完成したのが桂川(かつらがわ)電力の駒橋(こまはし)発電所(山梨)で、完成当時の出力は1万5000キロワット、送電電圧を5万5000ボルトに昇圧して75キロメートル離れた東京まで送電した。これに続いて鬼怒川(きぬがわ)(下滝(しもたき)―栃木)、木曽川(きそがわ)(八百津(やおつ)―岐阜)、宇治(京都)などで水力発電が開発され、東京、名古屋、大阪に送電された。1914年(大正3)に猪苗代湖(いなわしろこ)の豊富な水力資源が開発され、猪苗代水力電気の猪苗代第一発電所から出力3万7500キロワットの電気を送電電圧11万ボルトで約230キロメートル離れた東京に送電できるようになって、水力発電の本格的長距離送電が開始された。1920年代には15万4000ボルト送電が行われるようになり、中部山岳地帯の豊富な水力が続々と開発され、東京および大阪の都市部に大規模に送電されるようになった。第二次世界大戦までは水力の開発が盛んであったが、大戦中と戦後の数年間は資材と労力の不足のため、水力発電の開発は一時停滞した。1950年代に入って戦後産業の復興に伴う旺盛(おうせい)な電力需要に対処するため、水力発電の積極的な開発が進められ、1961年(昭和36)までは水力発電を主体とし、火力発電を渇水期の補給用として稼動する水主火従(水力が中心で、火力がそれに従うの意味)の発電形態が電源開発の中心であった。しかし、その後は水力発電を経済的に開発できる地点の減少、電力需要の大幅な増加に加えて、大容量の高効率火力発電所や原子力発電所が建設されたため、電力需要のベースの大部分を火力や原子力発電が分担する火主水従(火力が中心で、水力がそれに従う)の発電形態に移行した。これに伴って水力発電の開発も、新鋭の火力・原子力発電にベース負荷をもたせ、ピーク負荷を水力発電に負荷させる大容量の貯水池式、揚水式のものが多くなった。とくに高度経済成長期以降は単機容量30万キロワット級、落差500メートル級で発電所容量100万キロワット級の大容量・高落差の揚水発電所の建設が主流となってきた。
こうして水力発電は、深夜の火力・原子力発電の余剰電力を活用し下池の水を上池に揚水させ、昼間の重負荷時に発電する、ピークシフト、一種の電力貯蔵の役割が重要になっている。また水力は出力の増減制御が容易なので負荷にあわせて発電出力を制御して、系統の周波数を監視する負荷周波数制御(LFC:Load Frequency Control)の役割もある。新しい水力発電技術として、揚水発電は発電水車をそのまま逆回転させて揚水ポンプにするが、その最高効率の回転スピードが違うことから、発電電動機の回転数を変えて運転する可変速発電システムが、世界に先駆けて1990年(平成2)ごろから大河内(おおかわち)(兵庫)、塩原(栃木)、奥清津(新潟)などの発電所に採用されている。また、海水(下部池)を利用した世界初の海水揚水発電所(出力3万キロワット、落差136メートル)が1999年沖縄北部に建設され運転を開始した。現在は、高度成長期以降に建設された大容量揚水式水力発電と、大容量の火力・原子力発電とを組み合わせ総合的な経済性を高める運用が行われている。日本の水力発電設備は、1999年度末時点で4433万キロワットで全発電設備の19.8%となっており、発電電力量(発電実績)では、水力発電は893億キロワットアワーで全電力量の9.7%であった(火力発電が約55%、原子力発電が34%)。2011年(平成23)3月の東日本大震災以降、原子力発電の後退によってこの比率は大きく変わっている。
[道上 勉・嶋田隆一]
水力発電の形式は、水路式、ダム式、ダム水路式、揚水式の四つに分けられる。
(1)水路式 河川の一地点で流水を取水し、緩やかな長い水路をつくって、その河川の勾配(こうばい)を利用し落差を得て発電する方式。
(2)ダム式 河川にダムをつくり、下流との間に落差を得て発電する方式。
(3)ダム水路式 ダム式と水路式を混合して落差を得て発電する方式。
(4)揚水式 発電所地点より高い所に人工のダムや天然の湖沼を利用した上部池を、また低い場所に下部池をつくり、深夜の火力、主として原子力発電の余剰電力により下部池の水を、発電用水車をポンプ運転して上部池に揚水し、昼間のピーク負荷時に下部池に落水して発電する方式。
また、水力発電を河川流量の使用方法の見方から分類すると、次の三つになる。
(1)流れ込み式 河川の自然の流量をそのまま利用して発電するもので、別名自流式ともよばれ、水路式がこれに該当する。この方式は流量の変化によって発電電力が変化する。
(2)調整池式 河川に調整池をもち、夜間の軽負荷時に流れ込む流量をこの池に貯水しておき、昼間のピーク時に発電する。発電の運用は1日間のサイクルで行われる。貯水池に比べて調整池の貯水容量は小さい。
(3)貯水池式 大きな貯水池をつくり、季節的な発電サイクルにより河川流量の調整を行い、春・秋のオフピーク期に貯水し、夏・冬のピーク期に発電する。
[道上 勉・嶋田隆一]
古くからつくられ、身近にある水路式発電所のおもな設備を取り上げてみる。
取水口は小さいダムで河川の本流の水をせき止め、発電のための用水として取り入れる所。この水が沈砂池に送られる。送られた水に含まれる土砂がそのまま水路以降の施設に流れ込むのを防ぐためにいったん広い池に導き、土砂を池に沈める。
沈砂池から出た水は水路に入る。水路には、開渠(かいきょ)、トンネル、水路橋などがある。トンネルには、上部に空気が入っているものと、断面全体が水に満たされているものの2種類があり、前者を無圧トンネル、後者を圧力トンネルとよんでいる。
水路と水圧鉄管の継ぎ目に、発電所で使用する水の2~3分間に相当する量を蓄える水槽が必要であるとされている。この水槽には、発電所で急に水を止めた場合の水の跳ね返りによる水圧鉄管内の圧力上昇を緩和する水槽を設ける場合があり、それをサージタンク(調圧タンク)とよんでいる。水槽から出た水は傾斜面に据え付けられた水圧鉄管に入り、その終端から主弁を経て水車に入る。
水力発電として使用される水車は大別して衝動型と反動型があり、前者には高落差領域で使用されるペルトン型、後者には中落差領域のフランシス型、中・低落差領域の斜流型、低落差領域のプロペラ型がある。また、水車の据付け方法として縦軸と横軸とがあり、大容量の水力発電所は大部分が縦軸である。一般に、水車の出力はその地点の落差と流量の積に比例する。
水車に直結し電気を発生する発電機は、ほとんどが三相交流同期発電機である。周波数は、東日本では50ヘルツ、西日本では60ヘルツ、発電機容量は数百キロワットから数十万キロワットと種々ある。また発電機電圧は中・小容量のもので3000~1万1000ボルト、大容量のもので1万3000~1万6000ボルトとなっている。一つの発電所に据え付けられる発電機の台数は発電所の出力に応じて決められるが、多くは2~5台程度で、これらは電気的に並列されて運転する。
発電機により発電された三相交流電圧は送電効率を高めるため発電所構内の変圧器により6万~50万ボルトの高電圧にして送電線に送られる。
水力発電所に要求される発電力は、需要の負荷曲線から昼間はもっとも大きく、深夜は激減することとなり、河川の自然流量をそのまま取り入れる水路式発電ではカバーできない。このため、調整池や貯水池が必要となり、さらに大容量の火力・原子力発電の開発により、いっそうこの要求が高まり、これを克服した揚水式が多く出現している。
[嶋田隆一]
河川の本流に大きいダムを建設して水をせき止め、ダムの上・下流の間にできる水位を利用して発電する方式である。この方式では、ダム建設に適した地点が要求され、川の両岸に山が迫っている所を選んでダムを築く。また地形が適当であるばかりでなく、ダムや発電所建設の膨大な資材の搬入にも便利でなければならない。さらに発電所はダムの裾(すそ)の横側、またはダムの内部などに設けるので、水を導く鉄管は短く、大きな落差を望めない。そこで落差をさらに大きくしたい場合は、水路を引いて水路式のように落差をつくるダム水路式が採用される。ダムの上流に蓄えられる水は、そのまま調整池・貯水池の役目を果たすこととなる。1960年代以降につくられた、火主水従の発電形態の大容量の水力発電所は、大部分がロックフィルダムとアーチダムである。ダム式の場合は、水路式のように水路、その他の水の運搬に関する設備は必要ないが、本流をせき止めるので、灌漑(かんがい)用水の確保、魚がダム地点を通過できるようにする魚道(ぎょどう)の設置などの配慮が必要である。
[道上 勉・嶋田隆一]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかし,ガス灯,石油灯等にとって代われるほどのものではなかった。それらに代替しうるようになるのは20世紀に入ってからで,電球の改良と水力発電による発電コストの低下によって,電灯料金を低下させうるようになってからであった。 水力発電の本格化は,発電規模の大容量化,遠距離・高圧送電等の技術進歩が前提条件であったが,日清戦争,日露戦争,第1次大戦と,戦争のたびごとに生じた石炭価格の暴騰が契機となった。…
※「水力発電」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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