不動明王につき従う8人の童子。八大金剛童子ともいう。一般には,慧光(えこう)童子,慧喜(えき)童子,阿耨達(あくた)/(あのくた)童子,持徳(指徳)(しとく)童子,烏俱婆伽(うぐばか)童子,清浄比丘(しようじようびく),矜羯羅(こんがら)童子,制吒迦(せいたか)童子をいう。中国で撰述された偽経〈聖無動尊一字出生八大童子秘要法品〉に記す諸尊である。このうち矜羯羅(Kiṃkara,随順・奴隷と漢訳),制吒迦(Ceṭaka,福聚勝者と漢訳)の2童子は,本軌にも説かれ不動明王の両脇侍とされることが多い。
遺品としては高野山金剛峯寺の八大童子像が名高く,このうちの6軀(2軀は後補)は仏師運慶の作と伝えられている。矜羯羅童子は胸前で合掌して独鈷(どつこ)を持ち,制吒迦童子は右手に宝棒,左手に三鈷杵をとるが,いずれもはつらつとした写実的表現に鎌倉彫刻の特質を認めることができる。
執筆者:上田 敬二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…釈迦像に脇侍を付す例はインドのマトゥラーの石彫像以来認められる。このほか薬師如来では日光・月光二菩薩,あるいは薬王・薬上菩薩が脇侍とされ,般若菩薩には梵天・帝釈の二天,不動明王には制多迦・衿迦羅の二童子,または八大童子が配される。天台の常行堂の本尊は宝冠阿弥陀を中尊とし,法利因語の四菩薩を四周に安置し,また薬師如来に十二神将,釈迦如来に十大弟子を配する例もある。…
…その中でも黄色の肉身によって〈黄不動〉と呼ばれる滋賀園城(おんじよう)寺の立像,赤色の肉身をもち〈赤不動〉と呼ばれる和歌山高野山明王院の半跏(はんか)像,青色の肉身に表され〈青不動〉と親しまれる京都青蓮(しようれん)院の座像の3幅が特に著名である。〈赤不動〉と〈青不動〉には二童子が描かれるが,不動明王の眷属としては八大童子が造像されることが多い。その尊名には諸説あるが,図像集の《覚禅抄》には,慧光(えこう)童子,慧喜(えき)童子,阿耨達(あのくた)童子,持徳(しとく)童子,烏俱婆伽(うぐばか)童子,清浄比丘(しようじようびく),矜羯羅(こんがら)童子,制吒迦(せいたか)童子の八尊が説かれる。…
※「八大童子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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