独鈷(読み)トッコ

デジタル大辞泉 「独鈷」の意味・読み・例文・類語

とっ‐こ〔トク‐〕【×鈷/独古/独股】

《「どっこ」とも》
密教で用いる法具金剛杵こんごうしょ一種鉄製または銅製で、両端がとがった短い棒状のもの。独鈷杵とっこしょとこ
縦に1に模した形を連ねて、縞状に織り出した織物。また、その模様。主に帯地で用いる。

とく‐こ【×鈷】

とっこ(独鈷)

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精選版 日本国語大辞典 「独鈷」の意味・読み・例文・類語

とっ‐こトク‥【独鈷・独古】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「どっこ」とも )
  2. 真言密教の修法に用いる、両端が分かれないでとがっている金剛杵(こんごうしょ)。鉄または銅で作られている。独一の真如法界を表わし、また勇猛・摧破などを意味するとされる。とこ。独鈷杵(とっこしょ)。とっこう。〔十巻本和名抄(934頃)〕
    1. 独鈷<b>①</b>〈和歌山県金剛峯寺〉
      独鈷〈和歌山県金剛峯寺〉
  3. 織り模様の名。の形を縦縞状に多くつらねたもの。帯地などに用いる。
    1. [初出の実例]「御引出物に優婆塞の独鈷を相伝して持たりけるを」(出典古事談(1212‐15頃)一)
    2. 「帯はぐっと古風に幅狭く仕立てた独鈷の唐繻子」(出典:腕くらべ(1916‐17)〈永井荷風〉一八)
  4. ( 形の連想から ) かつおぶしをいう、僧侶隠語。〔俚言集覧(1797頃)〕

と‐こ【独鈷】

  1. 〘 名詞 〙とっこ(独鈷)
    1. [初出の実例]「験者の物のけ調ずとて、いみじうしたりがほにとこや数珠(ずず)などもたせ」(出典:枕草子(10C終)二五)

とっ‐こうトク‥【独鈷】

  1. 〘 名詞 〙 「とっこ(独鈷)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「とっかう、さんかう、れいを、三つのたからものを、はうきにゆいそへ、にはをこそおはきある」(出典:説経節・説経苅萱(1631)中)

とく‐こ【独鈷・独古】

  1. 〘 名詞 〙とっこ(独鈷・独古)

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百科事典マイペディア 「独鈷」の意味・わかりやすい解説

独鈷【とっこ】

〈どっこ〉とも。仏具執金剛神の持つ金剛杵の一種)だが,それを図案化した連続模様をもいう。おもに博多織織模様とされ,1本配した一本独鈷をはじめ,2本,3本などと配する。

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世界大百科事典(旧版)内の独鈷の言及

【金剛杵】より

…バジュラは,把手の両端に鋭い刃のついた杵形の武器で,雷をかたどったものといわれ,本来は雷霆(らいてい)神インドラの所持物であったが,のち仏教では,この武器を持った神(執金剛神)がいつも影のように仏につき従い,仏を守護していたと考えられた。密教の法具としての金剛杵は,この武器が堅固であらゆるものを摧破(さいは)するところから,煩悩を破る悟りの智慧の象徴として採り入れられたもので,両端の刃先の形によって,1本だけ鋭くとがった刃先の独鈷(独股)(とつこ),その刃先に両側から勾(かぎ)形に湾曲した刃を2本備えた三鈷(三股),四方から4本備えた五鈷(五股)などがある。これらはいずれも武器のおもかげをとどめているが,ほかに,武器でない宝珠や塔をあしらった宝珠鈷や塔鈷といわれるものもある。…

※「独鈷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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