日本大百科全書(ニッポニカ) 「冠婚葬祭互助会」の意味・わかりやすい解説
冠婚葬祭互助会
かんこんそうさいごじょかい
毎月、会員から一定金額を掛金として徴収して積み立て、結婚式や葬儀などの際に、契約に定められた役務やその取り次ぎを行う事業者。事業者は支払われた前受け金(掛金)を活用して儀式を執り行う。通常、掛金は毎月2000~5000円ほどで、前払い期間を5年ほどに定めている互助会が多い。これらの互助会は、経済産業大臣の認可を受けた組織で、1973年(昭和48)より割賦販売法(昭和36年法律第159号)に基づく「前払式特定取引業」として業規制を受けるようになった。2014年(平成26)3月末時点で、全国に280社以上の冠婚葬祭互助会があり、これらの多くは葬儀会社などにより運営されている。加入総口数はおよそ2400万口、積立金の総額は約2兆4000億円(2014年3月時点)と推定される。全国の組織数は減少傾向にあるものの、加入口数や積立金はむしろ増加する傾向にある。
冠婚葬祭互助会は、一時的に大きな支出が必要な冠婚葬祭にかかる費用を、会員が積み立てることで相互に助け合うという目的で始まった。日本には鎌倉時代より、頼母子(たのもし)講といった互助的な金融組合の制度が存在してきた。冠婚葬祭互助会は、そのような相互扶助の制度を背景に、戦後の慢性的に物資が不足して所得水準が低い時代に組織化された。その後、互助会は営利目的で営まれる組織となり、加入者における扶助意識も徐々に低くなってきたため、1973年の割賦販売法改正を契機として、前受け金の保全措置、クーリング・オフ制度、追加金徴収の明定、解約制限条項の緩和、解約手数料の引下げなどに関する規定が整えられた。2015年1月には、京都消費者契約ネットワークが冠婚葬祭業者の高額な解約金を不当として訴えていた裁判で、最高裁判所は双方の上告を棄却し、原告の請求がおおむね認容されている。
なお、2014年12月には、掛金を積み立てたものの、加入者や家族がそれを忘れてしまい、葬儀などのサービスを受けないままに亡くなったり、所在がわからなくなったりしているケースが相次いでいることが報じられた。
[編集部]