出で来(読み)イデク

デジタル大辞泉 「出で来」の意味・読み・例文・類語

いで・く【出で来】

[動カ変]
内から出てくる。現れる。
「げにいとあはれなりなど聞きながら、涙のつと―・こぬ、いとはしたなし」〈・一二七〉
生まれる。
「いまだ皇子姫君も―・きさせ給はず」〈平家・三〉
生じる。起こる。
「わろびたる事ども―・くるわざなめれば」〈帚木
巡り合う。でくわす。
三月一日に―・きたるの日」〈須磨

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「出で来」の意味・読み・例文・類語

いで‐・く【出来】

  1. 〘 自動詞 カ行変 〙 表だったところに現われる。人目にたつ状態になる。
  2. (内にあるもの、隠れていたものなどが進み動いて)表に現われる。出現する。出てくる。
    1. [初出の実例]「大君のみことかしこみ伊弖久礼(イデクレ)ば吾(わ)ぬとりつきて言ひし児なはも」(出典万葉集(8C後)二〇・四三五八)
    2. 「げにいとあはれなりなど聞きながら、涙のつと出でこぬ」(出典:枕草子(10C終)一二七)
  3. (なかったものが)新しく生じる。できる。
    1. (イ) (ある状態や事件などが)発生する。起こる。
      1. [初出の実例]「逢ふよしの出来(いでくる)までは畳薦(たたみこも)重ね編む数夢(いめ)にし見えむ」(出典:万葉集(8C後)一二・二九九五)
      2. 「将門が乱いできて」(出典:大鏡(12C前)六)
    2. (ロ) この世に生まれる。
      1. [初出の実例]「若君のいとうつくしうおよずけ給ふままに、ほかにはかかる人もいでくまじきにや」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
    3. (ハ) こしらえられる。作られる。しあがる。産出する。
      1. [初出の実例]「河内の国、高安の郡に、いきかよふ所いできにけり」(出典:伊勢物語(10C前)二三)
  4. うまくある時機がめぐって来る。
    1. [初出の実例]「風も吹かず、よき日いできて漕ぎゆく」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月二一日)
  5. よりよい状態が現われる。
    1. [初出の実例]「生唼(いけづき)とは黒栗毛の馬、〈略〉当時五歳、猶いてくべき馬也」(出典:源平盛衰記(14C前)三四)

出で来の語誌

( 1 )上代のイデクは、元の動詞イヅ(出)とク(来)の自立性がかなり高かったためか、ほとんどの例がの意味で用いられており、用法は特異なものであった。
( 2 )中古にはの用法が次第に多くなる。中世にはの用法が優勢になるが、後期にはイヅルのヅル・デルへの変化に伴って、デクルという形が一般化する。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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