カリヤスを原料とした染め色。刈安といわれるものに、(1)近江(おうみ)刈安または山刈安、(2)コカリヤスまたはウンヌケモドキ、(3)コブナグサまたはカイナグサの3種がある。近江刈安は『延喜式(えんぎしき)』にも載っている古典的な黄色染料で、伊吹山でとれるものが最良とされた。コブナグサは俗に八丈刈安ともいわれ、八丈島で黄八丈を染めるのに用いられている。コカリヤスは前二者に比べると、色素の含有量も少なく、一般にはあまり用いられない。
染法は、通常、乾燥した葉茎を煮出して煎汁(せんじゅう)をとり、これに糸または布帛(ふはく)を浸(つ)けて染液を浸透させてのちアルミナ媒染を行う。これには通常ツバキ科のツバキ、サカキ、ヒサカキなどの灰汁(あく)が用いられる。一般にあまり耐久性のない黄色天然染料のなかでは、比較的堅牢(けんろう)度が高いので、単独または藍(あい)と併用して緑を染めるのに多く用いられた。
[山辺知行]
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
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