ヒサカキ(読み)ひさかき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒサカキ」の意味・わかりやすい解説

ヒサカキ
ひさかき / 柃
[学] Eurya japonica Thunb.

ツバキ科(APG分類:サカキ科)の常緑低木。若枝の樹皮は緑褐色、次年枝からは赤褐色を帯びる。よく分枝し、葉は枝に密につき、細長い楕円(だえん)形で長さ3~9センチメートル、細かい鋸歯(きょし)がある。雌雄異株であるが、ときに両性花をつける株もある。春、葉腋(ようえき)に径約3ミリメートルの花を1~5個束生する。雄花雌花よりすこし大きく、雄しべは多数。雌花にもときに不稔(ふねん)性の雄しべがある。秋、球形で黒紫色の液果を結ぶ。東北地方以南の本州から沖縄のやや乾いた山地に生え、朝鮮半島、中国にも分布することもある。サカキの少ない地方では、本種を神事代用する。庭木として植え、材は器具、細工材として用い、果実は染料とする。近縁ハマヒサカキは、若枝に毛が密生し、葉は細長い卵形であるので区別される。同じく近縁のヒメヒサカキは葉は狭長楕円形で長さ2~3センチメートルと小さく、九州の屋久(やく)島に分布する。

[杉山明子 2021年3月22日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒサカキ」の意味・わかりやすい解説

ヒサカキ
Eurya japonica

ツバキ科の常緑高木。アジア東部に広い分布をもち,日本では本州,四国,九州の暖地に自生する。やや乾燥した山地に生え,特に照葉樹林の低層木として普通にみられる。庭木として栽植されることもある。多数分枝し,倒披針形で質厚く,細鋸歯のある葉を2列に互生する。早春に,短柄のある白色小花を葉腋に1~3個集めて下向きにつける。花色は紫色を帯びることがあり,花は強い異臭を放つ。花には雄花,雌花および両性花があり,それぞれ別の株につく。果実は球形の液果で紫黒色に熟する。神事に用いられるのは同科別属のサカキ (榊)であるが,東京付近から北の地方ではサカキがないので,このヒサカキを代用にしている。

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