朝日日本歴史人物事典 「加藤春岱」の解説
加藤春岱
生年:享和2(1802)
幕末の瀬戸の陶工。赤津御窯屋の家に生まれ,幼名は宗四郎。幼いときから陶芸に秀で,文化13(1816)年15歳で父景典の跡を継ぎ,御深井焼にも参加した。30歳前後に11代尾張(名古屋)藩主徳川斉温から「春岱」の号を拝領したという。瀬戸で磁器を創始した加藤民吉に対し,陶器を守る春岱は,伝統の瀬戸焼に,赤絵や織部・志野の技も加え,陶胎に赤・白・黒で下絵付けした,いわゆる麦藁手にも長じていた。瀬戸焼では従来の伝統的な陶器を“本業”というが,春岱はその最後の名工のひとりである。作品には「春岱(花押)」と書き込み,伝統的な技術者であることを自負した。
(矢部良明)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報