日本大百科全書(ニッポニカ) 「労働保護法」の意味・わかりやすい解説
労働保護法
ろうどうほごほう
protective labour legislation
雇用関係にある労働者に公正かつ有利な労働条件や快適な職場環境を享受する権利を保障する法。労働者保護法ともいう。契約自由の原則を修正して国家が直接に労働契約の内容に関与し、労働条件の最低基準を定めて労働者の保護を図る。日本では労働基準法がその典型である。労働保護法はイギリス工場法(1802)に始まる。当初は年少者と女性の労働時間の規制を中心としていたが、しだいに保護の範囲を拡大し、成人男子にも適用が拡大され、内容も労働条件以外の諸条件に及んできた。
1919年に創設されたILO(国際労働機関)は国際労働基準の形成に貢献してきた。ILOの採択した国際労働基準に関する条約、勧告は、労働時間や安全衛生などの狭い意味での労働条件基準にとどまらず、団結権や団体交渉権、雇用保険、社会保障、労働者生活など、幅広い分野に及んでいる。
[寺田 博]
『日本労働法学会編『現代労働法講座9 労働保護法論』(1982・総合労働研究所)』▽『伊藤博義・保原喜志夫・山口浩一郎編『労働保護法の研究――外尾健一先生古稀記念』(1994・有斐閣)』▽『遠藤昇三著『労働保護法論』(2012・日本評論社)』