1947年に制定された労働条件の最低基準を定めた法律。労働時間の上限を原則「1日8時間、週40時間」とし、それを超える労働や休日労働をさせるためには労使協定の締結が必要なことや、賃金は全額を直接労働者に支払わなければならないことなどを定める。働き方の多様化に伴い、法律も実態に合わせる必要があるなどとして、厚生労働省の研究会で改正に向けた議論が進んでいる。
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労働者の生存権保障を基本理念として、労働条件の強行的な最低基準を定めた法律。昭和22年法律第49号。略称、労基法。国家が雇用関係に直接的に介入し、労働条件の最低基準を法定することなどを通じて労働者の保護を図る法分野を、労働保護法(もしくは労働者保護法)という。具体的には、最低賃金法(昭和34年法律第137号)、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)や、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)等のさまざまな法律があげられるが、本法はその基本法として位置づけられる。労働組合法(昭和24年法律第174号)、労働契約法(平成19年法律第128号)と並び、日本の労働法制の中核を担う重要な法律である。
[土田道夫・岡村優希 2018年11月19日]
資本主義社会においては、使用者(資本家)と労働者は、形式上、対等な契約当事者として、賃金や労働時間等の労働条件を合意により決定するものとされている(契約自由の原則)。しかし、労働者は、生活原資の大部分を自らの労働によって稼得せざるをえないため、実際上、使用者よりも経済的に劣位の立場にある。このような状況下で、形式的な契約の自由を貫徹すると、経済的に優位にたつ使用者が、労働者に対して劣悪な労働条件を強制するという問題が生じてしまう。そこで、労働者を保護するため、イギリスの通称1802年工場法を萌芽(ほうが)として、労働条件の基準を定めた各種の労働保護法が制定されてきた。
日本においても、1911年(明治44)に工場法が制定され、1916年(大正5)から施行されるようになったが、その規制水準はきわめて低く、また有効な監督機関を欠いていたため、事実上効力はなく、いわば死文に等しい状況にあった。本格的な労働保護法の導入は、第二次世界大戦後の日本国憲法および労働基準法の制定を待たなければならなかった。
[土田道夫・岡村優希 2018年11月19日]
労働基準法は、国家が契約関係に直接介入し、労働者の生存権を保障することを基本理念として、日本国憲法に基づいて1947年(昭和22)4月に制定された。
日本国憲法27条2項は「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」として、国家が法律の制定を通じて労働契約関係へ直接的に介入すべきことを明らかにしている(契約自由の原則の修正)。それと同時に、日本国憲法では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(25条1項)として生存権の保障がうたわれている。これらの憲法上の規定を基礎として、労働基準法は、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充(み)たすべきものでなければならない」(1条1項)として、生存権保障を基本理念とすることを明らかにしたうえで、各規定において労働条件(労働契約内容)の強行的な最低基準を設定している。
[土田道夫・岡村優希 2018年11月19日]
労働基準法は、全13章から構成され、労働条件の基準と労働者の人権保障に関する各種規定を設けている。
第1章(1~12条)は、総則規定であり、本法全体に共通するルールを定めている。これらのうち、1~7条(労働条件の原則、労働条件の決定、均等待遇、男女同一賃金の原則、強制労働の禁止、中間搾取の排除、公民権行使の保障)は、「労働憲章」とよばれ、労働者の人権保障を趣旨とする点でとくに重要な規定である。同様の規定は、第2章等にもみられる(賠償予定の禁止:16条、前借金相殺の禁止:17条、強制貯金の禁止:18条等)。
続いて、9条・10条は、「労働者」および「使用者」の定義規定を置いて本法の適用範囲を画定し、11条は、本法が対象とする「賃金」の定義規定を定めている。
第2章(13~23条)では、労働契約に関する各種規定が置かれている。具体的には、本法違反の契約の効力(13条)、契約期間の上限規制(14条)、労働条件の明示義務(15条)、前述の賠償予定・前借金相殺・強制貯金の禁止(16~18条)、解雇の手続的規制(19~21条)等が定められている。これらのうち、13条の規定はとくに重要である。歴史的にみて、労働保護法の実効性は、おもに刑罰法規の適用や行政指導等の公法的な規制によって担保されてきた。これに対して、13条は、本法に違反する契約を無効としたうえで、当該無効部分を本法所定の基準で補充する旨を定めている。このことは、労働保護法に対して契約内容を直接規律するという、私法上の効力を付与することを意味しており、伝統的な公法的規制と比較してより強力な実効性確保措置を設けたものということができる。
第3章(24~31条)では、賃金に関する規定が設けられている。とくに、賃金の支払いについて、通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則、毎月1回以上一定期日払いの原則という、賃金支払いに関する原則を定めた24条の規定が重要である。賃金は労働者の重要な生活原資であるので、本法は、これら原則を通して、労働者が確実に賃金を受領できるようにしたものである。
なお、本法は、賃金の最低基準(最低賃金)に関する規定を設けていたが、現在、その内容は最低賃金法として分離発展を遂げている(28条。詳細は「最低賃金制」の項を参照)。
第4章(32~41条)では、労働時間、休憩、休日および年次有給休暇に関する規定が置かれている。労働者は生身の人間であるため、労働が過度に長時間にわたったり、休日を十分にとれなかったりする場合は心身に不調をきたし、最悪の場合には命を落とすこともある(いわゆる過労死や過労自殺の問題)。また、過度な長時間労働は、労働者の私的生活の時間を奪うことにもなりかねず、私的領域における自己実現等の人格的利益を害する危険性もある。そこで、本章では、労働時間や休日等に関する規律を設けることで、労働者の生命・健康を保護するとともに、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に寄与しようとしている。
まず、本章は、労働時間については1週間40時間・1日8時間(32条)、休日については1週間1日(35条1項。週休制)という原則的な上限規制を設けている。そのうえで、一定の要件のもとで、この原則的上限の超過を認めている。その代表といえるのが、使用者と過半数組合・過半数代表者が締結する労使協定(いわゆる「三六(さんろく)協定」。「さぶろくきょうてい」と読まれることも多い)による時間外・休日労働の適法化制度である(36条)。この制度については厚生労働大臣によって限度基準が定められているが、これは行政指導の基準にとどまり、強行的・絶対的な上限ではない。そのため、それを超える協定を結ぶことも可能であり、過度の長時間労働を生じさせる大きな要因となっている。もっとも、法定時間外労働・休日労働には割増賃金が発生するため(37条)、これが長時間労働を一定程度抑制する機能を果たしている。以上のほかにも、本章では、休憩時間の付与(34条)、複数事業場における労働時間の通算制(38条1項)や、年次有給休暇の付与(39条)等の原則規定とともに、管理監督者等に対する適用除外規定(41条)等が設けられている。加えて、変形労働時間制(32条の2、32条の4、32条の5)、フレックス・タイム制(32条の3)という各種の弾力的な労働時間制も導入されている。また、実際の労働時間の算定が困難となる事業場外労働について、所定労働時間の労働をしたとみなす制度(38条の2)や、通常の労働時間制度がなじまない労働者に向けた裁量労働制(専門業務型裁量労働制:38条の3、企画業務型裁量労働:38条の4)も導入されている。以上のように、労働時間制度は多様な内容を有しており、本法のなかでももっとも進んだ法分野の一つであるといえる。
第5章(42~55条)では、従来、労働者の安全衛生に関する規定が設けられていた。しかし、現在では、それらの規定は労働安全衛生法として分離発展を遂げている。
第6章(56~64条)では、年少者の保護に関する規定が設けられている。具体的には、親権者が未成年にかわって労働契約を締結することの禁止(58条1項)や、就業可能となる最低年齢の法定(56条1項)、時間外労働・休日労働の制限(60条)、深夜業の制限(61条)等によって、心身の未発達な年少者を保護している。
第6章の2(64条の2~68条)では、母性保護のための規定が設けられている。かつては、女性一般を保護する規定が設けられていたが、男女の雇用平等を保障する男女雇用機会均等法(昭和47年法律第113号)の制定・発展とともに廃止され、母性保護(女性の妊娠・出産に着目した保護)の規制へと発展を遂げたものである。具体的には、妊産婦の危険有害業務への就業制限(64条の3)、産前産後の休業・軽易業務への転換(65条)、育児時間の確保(67条)等の規定が置かれている。
第7章(69~74条)では、技能者の養成に関する規定が設けられている。
第8章(75~88条)では、労働災害補償についての規定が設けられている。労働災害は、労働者に傷病・休業・死亡といった望ましくない結果をもたらし、本人や家族の生活を困窮に追い込む危険を有している。そこで、本章は、使用者に対して、労働災害に係る無過失責任を負わせ、療養補償(75条)、休業補償(76条)、障害補償(77条)、遺族補償(79条)や打切補償(81条)等の各種の補償義務等を定めている。もっとも、使用者に資力がない場合には、このような補償等を行うことが困難となる。そこで、社会保険制度として労働者災害補償保険法が制定され、国が使用者から保険料を徴収して保険給付を行うこととなっており、今日ではこの労働者災害補償保険法が労災補償制度の中心を占めている。
第9章(89~93条)では、就業規則に関する規定が置かれている。就業規則とは、労働条件や服務規律等を定める規則をいう。就業規則の内容は、労働条件(労働契約の内容)を決定する際の最低基準として機能する(本法93条、労働契約法12条)。本法は、一定規模以上の使用者に対して、必要的記載事項を明示のうえ、就業規則の作成を義務づけるとともに、その作成・変更の際に行政官庁へ届け出ることを義務づけている(89条)。また、就業規則の作成・変更により影響を受ける労働者側(過半数組合・過半数代表者)からの意見聴取を義務づける(90条)とともに、法令・労働協約違反を禁止する規定(92条1項)を設けている。本章は、このような規定を通じて、就業規則制度が適正に運用されるように配慮している。なお、就業規則と労働契約の関係(就業規則が契約内容を補充・変更する効力)については、労働契約法7条・10条が規定している。
第10章(94条~96条の3)では、寄宿舎に関する規定が定められている。第11章(97~105条)では、本法の実効性を確保するための監督機関についての定めが置かれている。日本においては、厚生労働省(労働基準局)を頂点として、都道府県労働局、労働基準監督署が設置され、労働基準行政を担当している。このような監督機関の働きによって、本法の実効性確保が図られている(詳細は「労働基準監督署」の項を参照)。
第12章(105条の2~116条)では、国の援助義務や法令等の周知義務等の雑則が定められている。本法の実効性確保の観点からとくに重要な制度は付加金制度であり(114条)、使用者が解雇予告手当や割増賃金の支払義務に違反した場合等に、労働者の請求によって、支払うべき金額と同額の金銭の支払いを裁判所が命じる制度をいう。第13章(117~121条)では、本法上の各種規定に違反した場合の罰則規定が設けられている。本章は、刑罰権という国家の強大な権限を背景として本法の遵守を促し、その実効性担保に寄与する点で重要な意義を有している。
[土田道夫・岡村優希 2018年11月19日]
2018年(平成30)、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)が成立した。これは、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等を目的として、各種労働法規制の整備を行うものである。
この法律においては、労働基準法についても、時間外労働の絶対的上限規制の導入(改正法36条2~6項)、フレックス・タイム制の見直し(清算期間の上限の延長。同32条の3第1項2号)、年次有給休暇の付与義務の創設(同39条7項)や、特定高度専門業務・成果型労働制の導入(高度プロフェッショナル制度。同41条の2)等の重要な改正が行われた。とくに、時間外労働の絶対的上限規制の導入は、従来は行政指導の基準にとどまってきた時間外労働の限度基準(現行法36条2項参照)を罰則つきの強行的基準に改めるものであり、画期的な意義を有している。
[土田道夫・岡村優希 2018年11月19日]
労働者と使用者との個別的労働関係を労働者保護の見地に立って規制している法律の全体をいうが(実質的意義における労働基準法),普通には,憲法の定めている勤労条件法定主義の原則(27条2項)に基づき,1947年4月に制定公布された法律を指す。略称労基法。以下この形式的意義における労働基準法に関して述べる。労働基準法は,労働組合と使用者またはその団体との関係(集団的労働関係)を対象にしている労働組合法,労働関係調整法とともに労働三法を構成する。いわゆる要保護労働者(年少者および女子)にかぎらず,労働者一般を対象とし(9条),業種・業態のいかんにかかわらず適用される普遍立法である(8条)点に労働者保護法としての重要な特色がある。
第1に,重要な労働条件について最低基準を法定したことである。労働者が労働関係において〈人たるに値する生活を営むための必要〉を充たすに足る労働条件を享受すること(1条)は社会正義の重要な一側面である,との観点に基づいている。第2に日本が従来,不当な廉価労働に寄生して国際経済競争力を維持してきたこと(いわゆる労働者の〈血と肉の輸出〉)に対する反省に立脚し,日本の労働者の最低労働基準を,国際労働条約(ILO条約)の定める水準に高めようとしたことである。第3に,明治維新以来日本の労使関係に根深く付着していた半封建的雇用慣行を徹底除去し,労働関係の近代化を図ったことである。
その最低労働基準の定めと,労働者の人格と自由の尊厳の保護規定との実効性を確保するため次のような措置が講じられている。
第1は,刑事罰による遵守の強制である。違反行為者のほかその事業主(法人の代表者)もあわせて処罰される(117~121条)。
第2に,労働者保護規定が日常的に守られるように使用者を監督・指導する特別の監督機関(労働基準局,都道府県労働基準局および労働基準監督署)を設けて種々の権限を与え,他方,使用者にはその監督・指導を円滑に実施するうえに必要な各種の義務が課せられている。すなわち,労働基準監督官は事業場,寄宿舎その他の附属建設物に臨検し,帳簿等の提出を求め,または関係者を尋問することができ(101条),この法律違反の罪については司法警察官の職務を行う(102条)。また,付属寄宿舎の設置等に関して必要があれば工事を差し止め,計画の変更を命令し,または別に事業付属寄宿舎規程(1947),建設業付属寄宿舎規程(1967)として定められている安全衛生基準に反するものの使用停止その他必要な事項を命令する権限(96条~96条の3,103条)を与えられている。使用者に課せられている義務には,この法律の施行に関し監督官等から要求があった場合の報告,出頭の義務(110条),労働者名簿,賃金台帳その他諸記録の作成と保存,備付けの義務(107条~109条,57条)のほか,労働者保護規定の原則の適用除外を受ける場合に,届出をし(貯蓄金の委託管理協定につき18条2項,時間外労働協定につき36条など),認定を受け(解雇制限の除外理由につき19条,帰郷旅費不支給理由につき68条,休業補償・障害補償の不支給理由につき78条など),あるいは,許可を得る(一斉休憩の例外につき34条2項,監視・断続労働としての許可につき41条3号,満12歳以上15歳未満の児童の使用につき56条2項など)ことが義務づけられている。使用者に就業規則の作成(変更の場合も含む)と届出を義務づけ(89,90条,92条2項),あるいは,この法律違反の事実を監督機関に申告した労働者を解雇その他不利益に取り扱うことを禁止しているのも(104条)労働者保護規定の遵守に関する行政官庁の監督権限を円滑に行使せしめようとする趣旨である。
第3は,一定の場合について賃金の支払を履行しない使用者に対し,裁判所は労働者の請求により未払額に加えそれと同一額の支払を命令することができる,という付加金の制度(114条)をあげることができる。使用者はこの制度によって法律違反が経済的に引き合わないことを知り,労働者には権利の積極的な主張を促すことになろう。
第4に,この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,その部分については無効とされ,無効となった部分は,この法律で定める基準によって規律される(13条)。すなわち,労働基準法の労働者保護規定は労働者の使用者に対する民事上の請求権を直接に根拠づけるものとされている。
この法律が定めている労働者保護規定の概略は次のとおりである。
(1)労働関係における労働者の基本的人権の保護 これには,労働条件に関する均等待遇の原則(3条),男女同一賃金の原則(4条),強制労働の禁止(5条),および中間搾取の排除(6条),公民権行使の保障(7条)がある。
(2)労働者の使用者に対する半封建的従属状態の原因となる雇用慣行を除去するために労働契約の期間の定めを原則として最長期1年に制限し(14条),雇入れの際は労働条件を明示すべきものとし(15条),労働者の労働契約の不履行について違約金や損害賠償額を予定する契約を禁止し(16条),前借金や賃金と相殺したり(17条),賃金からの天引貯金や貯蓄金を管理する契約の締結を強制すること(18条1項)を禁止した。使用者による職業訓練の方法の規制に関する規定(69~73条)および事業付属寄宿舎における労働者の私生活の自由と自治を保障した定めもこれに含まれるとみてよい(94,95条)
(3)賃金について通貨払い,直接払い,全額払い,毎月一定期日払いの4原則を中心にした支払保護規定が定められた(24~27条)。
(4)労働者を過度の疲労や不健康から保護する規定がある。8時間労働制の原則(32条),休憩(35条),休日(35条),年次有給休暇(39条)の保障,および,時間外労働・休日労働の制限と手続の規制,割増賃金の支払義務(33,36,37条)がそれである。(5)最低就業年齢が満15歳とされ(56条1項),例外的に使用できる満12歳以上15歳未満の児童(同条2項),満15歳以上18歳未満の年少労働者,未成年者および女子労働者について,成年の男子労働者にみられない種々の保護が与えられることになった(60条~64条)。加えて女子労働者には産前産後の休業(65条),育児時間(66条),生理休暇(67条)が与えられた。
(6)労働者の失職の防止またはその苦痛から軽減および転職妨害の禁止である。解雇の時期の制限(19条),予告期間(20,21条),帰郷旅費の負担(15条2項,3項,68条),使用証明の発行(22条)に関する定めなどがこれである。
(7)業務上負傷,疾病,死亡した労働者または遺族に対する各種の災害補償義務が定められた(75~88条)。
この法律の規定のなかからのちに,最低賃金法(1959公布),労働安全衛生法(1972公布)が単独立法化された。このほか,労働基準法と性質上一体をなす主要な法律に,労働者災害補償保険法(1947公布),じん肺法(1960公布),勤労婦人福祉法(1973公布),〈賃金の支払の確保等に関する法律〉(1976公布),などがある。
執筆者:渡辺 章
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労働条件の最低基準を定めた法律。GHQの占領政策の一つである労働改革の流れのなかで1947年(昭和22)制定された。労働者保護法制の中心をなす。恩恵的な労使関係を前提としていた1911年(明治44)制定の工場法などとは異なり,日本国憲法第25条(生存権)や第27条2項(勤労条件法定主義)などの理念をうけたもので,労使関係の近代化を意図していた。今日まで最低賃金法(59年),労働安全衛生法(72年)などの関連諸法規が制定され,その理念や原則もかなり変貌をとげつつある。とくに最近では,87年・93年(平成5)・98年に大改正がなされ,98年の改正は,男女雇用機会均等法や育児・介護休業法などの改正もともなうものであり,制定以来最大の改正であった。女子保護規定の撤廃,労働時間の規制の弾力化,規制緩和策などが盛りこまれた。この背景には,経済のサービス化,情報化,グローバル化,そして少子・高齢化などの社会の変容が大きく影響している。
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…しかし,船員は共同体の一員であると同時に労働者であることから,労働契約関係の明確化と労働条件の適正化のための法的措置がとられている。船員法は,船員の生存確保のための船主の食料支給義務,船員の無定量の労働を防ぐための船内労働時間制,および十分な休養と家庭生活のための有給休暇について定めるほか,ほぼ労働基準法に相当する事項について船員の労働条件の基準を定めている。労働基準法は,総則と罰則とをのぞき船員には適用されない。…
…1日の所定時間を超える残業・早出と,休日出勤とがある。日本の労働基準法は〈休憩時間を除き1日について8時間,1週間について48時間を超えて,労働させてはならない〉(32条)と定めているが,他方36条で,この限度を超える時間外労働が,労働組合または〈労働者の過半数を代表する者〉との〈書面による協定〉(三六協定)で可能とされている(ただし18歳未満の年少労働の残業は禁止)。時間外労働の上限は,女子についてのみ定められている(1日2時間,週6時間,年150時間。…
…広義には,心身がなお未成熟の成長段階にある者の労働を児童労働,成人するになお至らない者の労働を年少労働という。いっそう限定された意味においては,工場法・労働基準法などの労働者保護立法によって雇用を禁止される特定の年齢未満の者の労働を児童労働,いっそう年長ではあるが,成人男子とは区別されてとくにつよく労働時間などを規制される特定の年齢未満の者の労働を年少労働という。 児童労働,年少労働は歴史上古くからみられたのであるが,それが社会問題として注目され,国家によって規制されるようになるのは,産業革命以降のことである。…
…時間外労働(残業)が長引いた際および交替制勤務において深夜業が問題となる。労働基準法では午後10時~午前5時を深夜として,25%の割増賃金支払義務や年少者と女子の就業禁止(10時半終業の交替制は可)を定めている。(〈児童労働・年少労働〉および〈女子労働〉の項参照)。…
…女工に対する前借金は,昭和恐慌(1930)以降繊維産業全体の不況が長期化するなかで,事実上姿を消していったが,中小のサービス業等ではなお根強く残っていた。第2次大戦後は,前借金が労働者の拘束策として用いられることをさけるため,労働基準法によって,前借金と賃金を相殺することが禁止されている(17条)。【東条 由紀彦】。…
…資本家団体のスローガンは〈安全はペイする〉というものだが,宣伝にもかかわらず,なかなか災害が減らないのは,単に無知な経営者が多いだけでなく,ペイしない災害が多いためでもある。日本の労働安全立法は労働基準法(1947公布)と鉱山保安法(1949公布)が中心であるが,前者の第5章〈安全及び衛生〉は,基本的には1972年に削除されて,別に労働安全衛生法が同年設けられた。イギリスの工場法のように,一般的規定を含む労働安全衛生規則のほか,個別の危険についての防止策を規定している三つの規則がある(規則ではこのほか衛生関係のものが多い)。…
… いずれにしても,今日の産業社会において,労働災害は起こるべくして起こることを前提に,使用者のコスト負担として補償する思想が定着している。
[日本の制度]
日本では,労働災害とその補償について,個々の使用者の直接的な災害補償を定める労働基準法(1947年公布。以下,労基法と略)と,労働災害に対する使用者の補償の分損化を社会保険の形で行う労働者災害補償保険法(1947公布)とがある。…
…ただ1970年代以降,各国は雇用対策の一環として使用者の解雇権を制限する立法を成立させたが,日本においてはすでに判例法における解雇権濫用および解雇無効の法理や,労使自主法により雇用保障の実があがっていたところから,このような立法を必要としなかった点で特色を有する。 労働者保護については契約締結から解雇に至る労働条件の最低基準を包括的に定め(労働基準法。1947公布),保険制度を利用した労働災害補償制度を設立し(労働者災害補償保険法。…
※「労働基準法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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