雇用保険(読み)コヨウホケン

デジタル大辞泉 「雇用保険」の意味・読み・例文・類語

こよう‐ほけん【雇用保険】

社会保険の一。失業給付基本手当)のほか、雇用安定・雇用改善・能力開発・雇用福祉を目的として、事業主および労働者が加入する保険。従来の失業保険に代わって昭和50年(1975)に発足。

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共同通信ニュース用語解説 「雇用保険」の解説

雇用保険

労働者と企業が保険料を支払い、失業対策職業訓練などに必要な費用を支出する保険制度。国が運営し、国費も投入している。加入者は職を失ったときに失業給付、子育て中に育児休業給付などを受け取れる。このほか雇用調整助成金や職業訓練を行う雇用保険2事業がある。現在の保険料率は労働者が賃金の0・6%、企業が0・95%。

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精選版 日本国語大辞典 「雇用保険」の意味・読み・例文・類語

こよう‐ほけん【雇用保険】

  1. 〘 名詞 〙 社会保険の一つ。従来の失業保険に代わり、昭和五〇年(一九七五)から施行。失業給付金の給付だけでなく、積極的に雇用構造の改善や、職業の安定に資するのが目的。

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改訂新版 世界大百科事典 「雇用保険」の意味・わかりやすい解説

雇用保険 (こようほけん)

1947年に日本では初めて導入された失業保険に代わって74年に成立。75年4月から実施された失業を保険事故とする社会保険制度。失業した労働者の生活を保障するための求職者給付が中心となるほか,再就職を促進するための就職促進給付,さらには労働者の職業の安定化を目的とし,事業主単独負担による財源を使って事業主への助成を行う雇用安定,能力開発,雇用福祉の各事業が創設された。その後,人口の高齢化・少子化が進むなかで,高齢労働者や乳児を抱える女性労働者の職業生活の継続を支援することを目的に,94年雇用保険法等の改正が行われ,主要部分は95年4月実施された。新設された雇用継続給付制度は,賃金は低下したが現に雇用中の60歳代前半期の被保険者を対象とする高年齢雇用継続給付と,1歳未満の子の養育のため育児休業中だが,失業状態にはない被保険者を対象とする育児休業給付からなり,保険事故が失業以外に拡大された。94年雇用保険改革は,高年齢者の雇用の安定等に関する法律の改正と並んで,65歳までの継続雇用の推進という政策目的の実現をめざす。他方厚生年金保険など老齢年金支給開始年齢の60歳から65歳への段階的引上げ,60歳代前半層への部分年金制の採用などとも関連している。公的年金保険老齢年金と雇用保険基本手当の重複受給を廃止し,65歳到達を機に雇用・雇用保険から公的年金へと生活手段の移行を行うという図式が背景にある。

 雇用保険の保険者は国で,労働省が事務を所管する。労働者を雇用する事業はすべて強制適用対象となるが,一部任意適用事業があり,国,地方公共団体など一定の適用除外事業・労働者がある。65歳以後新たに雇用される者(日雇労働,短時間労働被保険者を除く)も除外される。被保険者は,一般,高年齢継続(65歳到達前からの継続雇用中の),短期雇用特例(季節的雇用または1年未満の短期雇用を常態とする),日雇労働の各被保険者に区分され,さらに前2者は短時間労働被保険者か否かに分けられて,適用・給付条件に違いが生ずる。

 失業中の所得保障給付である求職者給付は,一般被保険者の場合基本手当が文字通り基本となる。失業状態にあり,離職前1年間に6ヵ月以上被保険者であったことが受給要件。基本手当日額は,原則として離職前6ヵ月の平均賃金日額の6~8割とされるが,低所得層のほうが給付割合が高い,高年齢者や心身障害者など再就職が難しい人々の給付日数が長いなど,保険的発想が薄められている部分もある。給付日数の最低は90日,最高は300日であるが,各種延長給付制度の適用状況によりさらに最高90日までの延長が認められる。他の3種類の被保険者には,それぞれ高年齢求職者給付金(被保険者期間に応じて50日分~150日分の範囲で支給される一時金),特例一時金,日雇労働求職者給付金が支給される。そのほか技能習得手当,寄宿手当傷病手当の制度がある。新設の高年齢雇用継続給付は,60歳以上65歳未満の被保険者で60歳時に比べ賃金が85%未満に低下した被保険者期間5年以上の者を対象とし,賃金低下率に応じ現在賃金の最高25%相当額(上限額あり)までの賃金補助を65歳到達まで行う。育児休業給付金の額は2回に分割支給され,合わせて休業前賃金の25%相当額となる。

 費用は,事業主と被保険者が分担する保険料および国庫負担金により賄われる。保険料率は,93年度以降当分の間11.5%(一部業種は13.5%または14.5%)に設定され,うち3.5%(一部業種は4.5%)は事業主単独負担で雇用安定事業等の費用に,残りの部分は労使折半負担で失業等給付費用に充てられるが,給付費用の1/4(一般)または1/3(日雇労働者)の8割(93年度以降当分の間)に相当する額の国庫負担金が加わる。雇用保険の給付費支出は1993年度において1兆6263億円,実支出総額の75%,国民可処分所得の0.4%であった。
失業保険
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百科事典マイペディア 「雇用保険」の意味・わかりやすい解説

雇用保険【こようほけん】

失業保険法に代わって施行された雇用保険法(1974制定1975年施行)に基づき,労働者が失業した場合に必要な給付を行い,労働者の生活の安定を図るとともに,求職活動を促進する保険。雇用改善事業,能力開発事業,雇用福祉事業の三事業を目的とする。政府が保険者となり,原則として全産業に適用されている。1997年改正で雇用改善事業にかわり雇用安定事業が規定された。2007年改正により,保険料の無駄遣いとされた雇用福祉事業が廃され二事業となった。また,被保険者及び受給資格要件の一本化や国庫負担の見直し等の改正が行われた。2010年改正では非正規社員が雇用保険に入る条件の緩和を柱としている。この改正によって255万人(当時)が新たに加入対象になるとされる一方,労使で負担する雇用保険料率は賃金の1.1%から1.55%に引き上げられた。2014年改正では男女ともに育児休業を取得することを更に促進するため,育児休業給付について休業開始後6ヵ月について給付割合を引き上げること,また従来の再就職手当に加え,離職時賃金と再就職後賃金の差額の6ヵ月分を一時金として給付することなどが盛り込まれた。被保険者には,一般被保険者,短期雇用特例被保険者日雇労働被保険者の3種があり,給付は,求職者給付,就職促進給付,教育訓練給付,雇用継続給付の4種が基本である。ちなみに,2009年3月に国際労働機関(ILO)が発表した,リーマンショック以降の世界経済危機が雇用に与えた影響についての調査報告書では,日本における失業手当雇用保険制度における基本手当)を受給できない失業者の割合は77%とされる。経済危機の発端となったアメリカ57%,カナダ57%,イギリス40%,フランス18%,ドイツ13%であり,日本は先進国中で最悪の水準でアメリカやカナダをも大きく上回る結果となっている。日本が飛びぬけて失業手当が受給できない失業者の割合が高くなった理由として,失業手当受給要件が他国よりも厳しいことが指摘されている。これに加え,急激に増加した派遣社員や契約社員などの非正規労働者に失業手当を受給するために必要な保険料納付期間が満たせない者が多いことも原因と見られる(2010年改正で若干改善された)。失業手当を受け取れない失業者の人数は,アメリカが最多の630万人,日本は210万人,イギリスは80万人,カナダは70万人,フランスは40万人,ドイツも40万人であり,日本とアメリカが突出して多いと指摘されている。
→関連項目育児・介護休業法雇用対策法雇用調整助成金社会保険

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雇用保険」の意味・わかりやすい解説

雇用保険
こようほけん

労働者が失業した場合などの失業等給付および育児休業給付を支給するともに、雇用保険二事業(雇用安定事業、能力開発事業)を行う保険制度。雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づく。従来の失業保険にかわって1975年(昭和50)に発足した。

 失業等給付には、失業者への求職者給付のほか、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付(高年齢雇用継続給付、介護休業給付)がある。また前記二事業のうち、雇用安定事業には、雇用調整助成金、労働移動や地域雇用開発を支援する助成金等があり、能力開発事業には、職業能力開発施設の設置運営、事業主による能力開発に対する助成金等がある。

 雇用保険は、原則としてすべての事業を適用対象としているが、農林水産業の5人未満の個人事業は暫定的に任意適用で、公務員は適用除外になっている。適用事業に雇用される労働者は当然に雇用保険の被保険者になる。なお、従来は適用除外とされていた65歳以降に雇用された者についても、2017年(平成29)1月から、雇用保険が適用されている。

 雇用保険の費用は、事業主と被保険者が負担する保険料と国庫負担によりまかなわれる。失業等給付・育児休業給付の保険料率は賃金総額のそれぞれ0.8%・0.4%(2023年度)で、事業主と被保険者が折半して負担する。二事業の保険料率は0.35%(2023年度)で、全額を事業主が負担する。なお、農林水産業、清酒製造業および建設業については、季節的に雇用される者が多く失業の発生率が高いため、やや高い保険料率になっている。失業等給付に対する国庫負担の割合は、給付の種類により異なるが、基本手当の場合は、雇用情勢および雇用保険の財政状況が悪化している場合は4分の1、それ以外は40分の1とされている。なお、上記の国庫負担とは別枠で、一定の条件のもとで、機動的に一般会計から繰り入れることができる。

[山崎泰彦 2023年6月19日]

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知恵蔵 「雇用保険」の解説

雇用保険

失業等給付と雇用3事業を主な事業内容とする制度。その基盤となる雇用保険法(1974年制定、75年施行)は、それまでの失業保険法を拡充したものである。それによって失業者に対する失業給付を中心としつつも、職業の安定のために失業の回避や雇用機会の増大・雇用構造の改善、労働者の能力の開発・向上、福祉の増進を図る(雇用保険3事業)総合的な保険制度を目指している。現行の雇用保険制度は、政府管掌の強制保険制度で、労働者と事業主が負担する保険料と国庫負担が財源。2003年には悪化した雇用保険財政の立て直しのため、失業手当の大幅カットを柱とした改正雇用保険法が成立した(同年5月施行)。また正社員とパートの二本立てだった給付日数基準も一本化された。その他、早期再就職を促すための「就業促進手当」の新設、「教育訓練給付」など雇用事業に関する見直しも行われている。

(桑原靖夫 獨協大学名誉教授 / 2007年)

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「雇用保険」の解説

雇用保険

厚生労働省が保険者となり、行なっている保険事業。失業者への給付を行なうため、「失業保険」とも呼ばれる。雇用保険の目的は、労働者がなんらかの理由で失業に陥った時に、再就職までの生活を安定させ、就職活動を円滑に行なえるよう支援する。重要なのは「再就職」が前提であり、再就職の意志がない場合は保険給付を受けることはできないことである。給付だけでなく失業の予防や雇用状態の是正など、労働環境の福祉にかかわる役目を担っているのが雇用保険事業で、雇用保険と労災保険をあわせて「労働保険」という。個人経営で4人以下の農林水産業を除く、すべての事業所で加入しなくてはならない強制保険。

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人材マネジメント用語集 「雇用保険」の解説

雇用保険

・employment insurance
・雇用保険は、雇用保険法に定められた失業給付のほか、失業の予防、雇用構造の改善、労働者の職業能力の開発・向上、その他労働者の福祉の増進等を目的として、各種の助成・援助を行うものをいう。
・雇用保険の保険者は「国」であり、公共職業安定所(ハローワーク)が事務を取り扱っている。掛け金は事業主と労働者が原則折半して負担する。
・労働者を一人でも雇用する事業主は、事業主・労働者が希望すると否とにかかわらず、すべて適用事業となる(農林水産事業のうち労働者が5人未満の個人経営の事業については、当分の間任意適用事業となる)。

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