動脈硬化用剤(読み)どうみゃくこうかようざい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「動脈硬化用剤」の意味・わかりやすい解説

動脈硬化用剤
どうみゃくこうかようざい

動脈硬化剤antiarteriosclerotic agentのことで、動脈硬化の治療および予防に用いる薬剤。抗脂血薬ともいう。動脈硬化の原因にはいろいろあるが、脂質代謝異常、血管壁の損傷および酸性多糖体を含む代謝異常、血液凝固・線維素溶解系の異常の三つの説が有力である。古くから動脈硬化と血中コレステロール値の上昇との関連が論じられ、血中コレステロール値を低下させる薬物が、この中心的薬剤となっていた。しかし、動脈硬化の成因はコレステロールの上昇のみでなく、中性脂肪の上昇、HDL(高比重リポタンパク)の減少、過酸化脂質の上昇、血小板粘着能や血液凝固能の亢進(こうしん)などがあげられ、これらを改善する薬剤がすべて動脈硬化用剤となる。動脈硬化の治療および予防には、まず食事療法がとられ、食事療法で不十分な場合に薬剤が投与される。

 動脈硬化用剤は作用機序(メカニズム)から次のように分類できる。(1)コレステロール吸収阻止薬 ソイステロール、ニコモール(「コレキサミン」)、ニセリトロール(「ベリシット」)、(2)胆汁酸吸収阻止薬 コレスチラミン、(3)胆汁酸の排泄(はいせつ)の促進薬 プロブコール(「シンレスタール」)、(4)コレステロール生合成の抑制薬 クロフィブラート(「アモトリール」)、シンフィブラート(「コレソルビン」)、クリノフィブラート(「リポクリン」)、ニコチン酸、タンパク同化ステロイド、(5)コレステロール異化排泄薬 不飽和脂肪酸(リノール酸など)、エストロゲン、多価不飽和リン脂質、(6)リポタンパクリパーゼ活性薬 デキストラン硫酸、ヘパリン、(7)その他 パンテチンエラスターゼ。ただし、これらのなかには複数の作用機序をもつものもある。いずれも経口投与される。

[幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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