内科学 第10版 「医療面接の三つの機能」の解説
医療面接の三つの機能(患者へのアプローチの基本)
(1)医師患者関係の構築
第1の機能は,患者との信頼関係の構築である.あいさつや身だしなみなどのマナーが基本となるが,何よりも大切なのは,疾患や症状だけでなく,その患者に興味をもつことである.そのためには,疾患の生物学的側面だけでなく,心理社会的側面にも配慮した(生物心理社会モデル:
biopsychosocial model)情報の収集や,共感的理解が必要になる.より具体的には①患者の身体に何が起きているのか②患者の気持ちや考えに何が起きているのか③患者の身の回りで何が起きているのか④その患者はどのような人なのかといったことを同時進行で考える.
(2)健康問題の評価
第2の機能は,患者の健康問題の評価である.そのためには,症状の経過や既往歴などの情報を系統的に把握し,可能であれば鑑別診断を想定してその鑑別に必要な情報に的を絞った質問も行う.医療面接の訓練で強調されるように,面接の開始時点では患者が自由に話せるように配慮することが,正確な情報の把握につながる.
(3)健康問題のマネジメント
第3の機能は,患者の健康問題のマネジメントである.患者にその健康問題について教育するとともに,生活習慣や受療行動の改善などについてみずから取り組むよう動機付けする.倫理的観点から,また病態から考えても,患者自身が健康問題について理解していない状態で,医療者が一方的に医療を行う場面はおのずと限られる.医師が医学知識を詳しく「知っている」ことは,それを「説明できる」ことと同義ではない.医学の専門的知識が増えるほど,何が専門用語なのか,非医療者は何がわからないのか,などが認識しにくくなりやすい.[大滝純司]
■文献
Bowen JL: Educational strategies to promote clinical diagnostic reasoning. NEJM, 355: 2217-2225, 2006.
Cole SA, Bird J 著,飯島克巳,佐々木将人訳:メディカルインタビュー−三つの機能モデルによるアプローチ 第2版,メディカル・サイエンス・インターナショナル,東京,2003.
中川米造:過誤可能性.医学の不確実性,pp30-31, 日本評論社,東京,1996.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報