千土師郷(読み)ちはじごう

日本歴史地名大系 「千土師郷」の解説

千土師郷
ちはじごう

古代律令制下の智頭郡土師はじ(和名抄)系譜を引く中世の郷。智土師郷とも記され、現智頭町を流れる土師川流域一帯に比定される。隣接する八上やかみ郡にも土師郷があり、これと区別するため郡名の頭字である智(千)が冠せられたのであろう。郷内は東方西方とに分れ、東方は上村下村に分れ、西方は上村・中村・下村に分れていたと推定されている。東方上村はもと千葉氏の一族東六郎盛義の所領であったが、その三分の一の九町三段大などが元亨元年(一三二一)六月二二日、すでに寄進されていた常陸国北郡内の地の替りとして金沢称名かねさわしようみよう(現神奈川県横浜市金沢区)に与えられた(「将軍守邦親王家寄進状案」金沢文庫文書)。盛義から称名寺への所領打渡しは遅々として進まなかったが、嘉暦四年(一三二九)七月一〇日になって守護人海老名維則は寺家に割譲する地域を確認して称名寺雑掌兼久に渡し(元徳元年一二月二日「関東下知状案」同文書)、翌日兼久からの早野わさの村・宇丹うに村を含む東方上村三分一の受取状を幕府に提出した(嘉暦四年七月一〇日「称名寺雑掌兼久千土師郷東方上村三分一請取状案」同文書)。しかし前代官東五郎が引継ぎをせず、年貢等を徴収するために必要な文書を持去ったため、同年六月二五日、千土師郷東方上村「うつか(宇塚)谷」の百姓らは称名寺に対して所持する田畠の所在地、斗代(税率)斗升(年貢を納入するとき使用する枡の大きさ)、一年間に負担する公事などについて自己申告し、その内容に偽りのない旨を当所那岐なぎ大明神ほか全国の諸神に誓っている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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