知恵蔵 「半田ビーズ」の解説
半田ビーズ
元の名は「機能性ナノ磁性微粒子」だが、開発した東京工業大学生命理工学研究科の半田宏教授の名をとって、海外では「半田ビーズ」と呼ばれている。
フェライトという鉄化合物をナノサイズの粒子にして、その表面をポリマーで完全に被覆したもので、その表面には、リガンド(タンパク質や薬剤などの標的物質をとらえる作用を持った化合物タンパク質や薬剤など)を固定するための腕のような役割をするリンカーが多数ついた構造になっている。実用化には、リンカーとリガンドを化学的に結合するための技術など、様々な新技術が投入されている。
半田ビーズを用いると、タンパク質の回収においては、従来の方法に比べて回収したタンパク質が高純度で、かつ回収効率が良いことが高く評価されている。また、外部磁場を使って薬剤等を目的の部位へ輸送したり、磁力を検出する性質を利用して微細な磁性物質をスクリーニングしたりといったこともできる。
製薬分野では、サリドマイドの例をはじめとして、薬剤の作用機序を解明したり、新薬の開発を目指した産学共同研究が盛んになってきている。また、磁界を検出するホール素子との組み合わせによるバイオセンサーがすでに開発されており、実用化・製品化に向けた研究が進んでいる。応用技術は、MRIの造影剤やがんの温熱治療剤、スクリーニング用ロボットなど多方面での成果を期待されている。
半田ビーズの開発は、05年から始まった東工大のスーパーCOEのうち「医療・バイオプロジェクト」分野において実現したもの。このプロジェクトでは、学内の電気電子工学、電子物理工学、高分子化学、バイオテクノロジー、有機合成化学など多彩な異分野から成る共同研究グル-プが組織され、学外の研究機関である慶應義塾大学医学部、秋田大学医学部、東邦大学医学部、東京医科歯科大学、国立がんセンター、放射線医学総合研究所なども参画している。
(石川れい子 ライター / 2010年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報