単斜輝石(読み)タンシャキセキ(その他表記)clinopyroxene

翻訳|clinopyroxene

改訂新版 世界大百科事典 「単斜輝石」の意味・わかりやすい解説

単斜輝石 (たんしゃきせき)
clinopyroxene

単斜晶系に属する輝石の総称で,もっとも普遍的な造岩鉱物の一つ。大部分のものの化学組成は透輝石CaMgSi2O6ヘデン輝石CaFeSi2O6単斜エンスタタイトMgSiO3-フェロシライトFeSiO3の4成分系で表すことができ,透輝石オージャイトピジョン輝石エジリンヒスイ輝石オンファス輝石など化学組成により数種類に分類されている。このほか,オージャイト-フェロシライト系列の輝石でTiO2を多く(>2~3重量%)含むものをチタンオージャイトと呼ぶ。また,エジリンNaFe3⁺Si2O6成分,ヒスイ輝石NaAlSi2O6成分などNaを多く含むものをアルカリ輝石とよぶ。透輝石-ヘデン輝石-エジリン系では連続固溶体をなし,中間的組成のものはエジリンオージャイトと呼ばれる。透輝石-ヘデン輝石-ヒスイ輝石系では中間組成のものはオンファス輝石と呼ばれる。特殊な単斜輝石としてMnを多く含むヨハンゼナイトjohannsenite Ca(Mn,Fe)Si2O6,Liを多く含むスポジューメンspodumene LiAlSi2O6,Alを多く含むファッサイトfassaite Ca(Mg,Fe2⁺,Fe3⁺,Al)(Si,Al)2O6などがある。特に透輝石,オージャイトはごくフェルシックなものを除くほとんどの火山岩や深成岩超マフィック岩,比較的高圧変成岩の主要な構成鉱物である。また月の玄武岩や斑レイ岩,隕石などにも含まれる。月の玄武岩中のものはあまりMgの多くないほとんどあらゆる組成を示す。ピジョン輝石は火山岩,特にソレアイト質火山岩やある種の隕石中などにしばしば含まれている。単斜エンスタタイトは比較的速く冷却したと思われるMgに富む火山岩にまれにみられ,また隕石中によくみられるが,それよりFeの多い単斜ハイパーシンは天然には産出しない。アルカリ輝石はアルカリ火山岩やランセン石片岩などの高圧変成岩に特徴的に含まれる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の単斜輝石の言及

【輝石】より

…そのようなSiO4よりなる鎖と鎖の間にMg2+,Fe2+,Ca2+その他の陽イオンが入って鎖を互いに結びつけている。輝石には斜方晶系に属する斜方輝石と単斜晶系に属する単斜輝石とがある。
[斜方輝石]
 MgSiO3(エンスタタイト)成分とFeSiO3(フェロシライトferrosilite。…

※「単斜輝石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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