日本大百科全書(ニッポニカ) 「普通輝石」の意味・わかりやすい解説
普通輝石
ふつうきせき
augite
輝石の一種で、中性から塩基性の火成岩中の重要な造岩鉱物の一つ。柱状あるいは短柱状で、二方向の劈開(へきかい)はほぼ直交する。マグマの性質や晶出時期によって組成の変化が著しい。マグネシウムに富むものから鉄に富むものまである。また、ナトリウムが富んでくると、エジリン普通輝石aegirine-augiteとよばれる。アルカリ玄武岩中のものにはチタンに富むものがあり、チタン輝石titanaugiteとよばれる。透輝石―灰鉄輝石系列の輝石との境界は、CaSiO3が45モル%のところに置かれている。火山岩中の自形結晶は粒度の大きいときはまず普通輝石か透輝石であるが、肉眼では両者を区別することはできない。以上のほか、高温変成になる変成岩中にも産する。英名は、光沢を意味するギリシア語に由来する。かつては玄武岩中の黒色柱状結晶に対してのみ使った。
[松原 聰]