各種岩石を構成する鉱物中、その主要成分をなす鉱物。火成岩に例をとれば、それらを構成する鉱物は、珪(けい)酸鉱物族、長石族、準長石類などからなる珪長鉱物と、橄欖(かんらん)石族、輝石族、角閃(かくせん)石族、雲母(うんも)族などからなる鉄苦土鉱物(苦鉄鉱物ともいう)という二つの区分を設けることで、ほとんどすべての火成岩の構成鉱物をこれに含めることができる。準長石のみが類となっているのは、岩石学的に準長石として扱われるものが、いくつもの異なった族に属しているためである。
厳密に用いるときには、火成岩造岩鉱物、堆積(たいせき)岩造岩鉱物、変成岩造岩鉱物というように成因的分類に基づく区分との複合語となる。
[加藤 昭]
『森本信男著『造岩鉱物学』(1989・東京大学出版会)』▽『松井義人・坂野昇平編『岩石・鉱物の地球化学』(1992・岩波書店)』▽『地学団体研究会編『新版地学教育講座3 鉱物の科学』(1995・東海大学出版会)』▽『周藤賢治・牛来正夫著『地殻・マントル構成物質』(1997・共立出版)』▽『鳥海光弘ほか著『岩波講座地球惑星科学5 地球惑星物質科学』(2000・岩波書店)』
岩石は1種類以上の鉱物が集合して構成されているが,この岩石を構成している鉱物を造岩鉱物という。多くはケイ酸塩鉱物とシリカ鉱物であるが,元素鉱物,硫化鉱物,ハロゲン化鉱物,酸化鉱物,水酸化鉱物,炭酸塩鉱物,リン酸塩鉱物,硫酸塩鉱物なども含まれる。現在知られている1000種類をこえる鉱物のうちおもな造岩鉱物はごく限られた数である。
火成岩は主としてシリカ鉱物と,長石族,準長石類,雲母族,輝石族,角セン石族,カンラン石族のケイ酸塩鉱物のうちの数種類,そのほかに少量の磁鉄鉱,チタン鉄鉱(いずれも酸化鉱物)やリン灰石(リン酸塩鉱物)などからなっている。それらの鉱物はマグマが冷却する過程で順次晶出したものと考えられ,鉱物の組合せや鉱物化学組成はもとのマグマの化学組成や晶出時の温度や圧力などの物理条件を反映している。それらの鉱物のうちシリカ鉱物や,長石,準長石などを無色鉱物あるいはフェルシック鉱物とよび,雲母(ふつう黒雲母),輝石,角セン石,カンラン石などを有色鉱物あるいはマフィック鉱物とよぶ。無色鉱物に富む岩石は色が白っぽく,多くはシリカSiO2に富み,有色鉱物に富む岩石は色が黒っぽく比較的SiO2に乏しい。
堆積岩は水底あるいは陸上で固結した堆積物が続成作用をうけて固化したものなので,もともと堆積物中に含まれていた鉱物と続成作用の過程で生じた鉱物とを含んでいる。砂岩や泥岩,レキ岩などの砕屑岩の構成鉱物はそれらをもたらしたもとの岩石の鉱物を反映することになる。ふつうの砂岩のおもな砂粒子は石英や長石類などで,それらの間をうめるものは泥,粘土,石灰質物質などである。非砕屑性堆積岩であるチャートはほとんどSiO2からなり,鉱物としては微細な石英,オパール,カルセドニーなどを主としている。石灰岩やドロストーンなどの炭酸塩岩は主として方解石,アラレ石,ドロマイトなどからなっている。火山性砕屑岩はそれらをもたらしたマグマを反映した鉱物を含んでいるが,基質が非火山性物質の場合は火山岩を構成する鉱物とは異質な鉱物を含んでいることもしばしばある。一方続成作用で新たに形成される特徴的な鉱物は各種粘土鉱物,沸石類,自生の長石類や雲母類などである。
変成岩は火成岩や堆積岩がいろいろな温度や圧力に応じ再結晶したり交代作用を被ったものなので,さまざまな鉱物が出現する。おもな鉱物は,石英,長石類,輝石類,角セン石類,雲母類やそのほかの層状構造をもつケイ酸塩鉱物(フィロケイ酸塩鉱物),ザクロ石や緑レン石など(ネソケイ酸塩鉱物)などである。実際にはこれらの鉱物のうち数種類のものが主要鉱物として含まれる。それは化学組成,温度,圧力により出現する鉱物種の数が限られるからである(鉱物学的相律)。さらに鉱物の化学組成もそれらの条件により変化するので,変成岩の鉱物の組合せとそれらの化学組成は,形成時の温度や圧力などの条件を推定する重要な手がかりとなる。なお岩石の造岩鉱物の量比はモードmodeとよばれる。
執筆者:永原 裕子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
岩石を構成する鉱物.おもなものは石英,長石類,准長石類,雲母類,角せん石類,かんらん石類,輝石類,ざくろ石類,スピネル類,緑泥石類,沸石類,緑れん石類,ジルコン,りん灰石,チタン石,炭酸塩類,蛇紋石類である.たとえば,花こう岩はおもに,石英,長石,雲母からなり,そのほか2,3の副成分を少量含んでいる.この場合,これらの鉱物を花こう岩の造岩鉱物という.岩石を構成している鉱物の組合せや,その種類,およびその晶出の順序などの研究によって,岩石の成因や,生成の条件の解明に大いに役立っている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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