日本大百科全書(ニッポニカ) 「卜部兼方」の意味・わかりやすい解説
卜部兼方
うらべかねかた
生没年不詳。鎌倉中期の古典学者。懐賢(かねかた)とも記す。卜部家は、もと神祇官(じんぎかん)の下級官僚家の一つであったが、しだいにその地位を固め、また古典伝承の家としても知られていた。神祇権大副(ごんのたいふ)兼文(かねふみ)(生没年不詳)の子であり、彼も神祇権大副まで昇進した。彼の著『釈日本紀(しゃくにほんぎ)』28巻は『日本書紀』註釈(ちゅうしゃく)書の初期に属する大著であり、なかに、平安初期に天皇の前で講じた諸博士の講義録ともいうべき『日本紀私記』や、家説として伝承された説を記しており、『日本書紀』研究史上の重要な書である(『新訂増補国史大系8』所収)。この『釈日本紀』は1274年(文永11)より1301年(正安3)ごろまでに成立したものとみられている。
[鎌田純一 2017年10月19日]